執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)
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1 婚姻費用・養育費と奨学金
現在、多くの学生が奨学金を利用しています。
この奨学金については、形式的にみると収入なので、それを考慮して婚姻費用・養育費を算定すべきと考えられます。
他方、奨学金を利用していない場合については、非監護親が学生の生活費の相当部分について婚姻費用・養育費として負担することとのバランスも問題となりうるでしょう。
そこで、以下、奨学金が支給される場合の婚姻費用・養育費の計算をどうするべきか、裁判例をもとに考えます。
2 奨学金と婚姻費用・養育費についての裁判例
奨学金があるがために婚姻費用を減額した東京家裁平成27年8月13日決定
東京家裁平成27年8月13日決定は以下のとおり述べます。
「申立人は,長男及び長女が奨学金の貸与を受けていることは,相手方の婚姻費用の分担義務を軽減させるべき事情とはならないと主張する。
しかしながら,貸与とはいえ,これらの奨学金により長男及び長女の教育にかかる学費等が賄われていることは事実であり,しかも,これらの奨学金で賄われる部分については,基本的には,長男及び長女が,将来,奨学金の返済という形で負担するものであって,当事者双方が婚姻費用として分担するものではない(このことは,長男が相手方の別居を理由に奨学金の額を増額していたとしても,異なるものではない。)のであるから,奨学金の貸与の事実が,相手方の婚姻費用の分担義務を軽減させるべき事情にならないということはできない。」
このように、学生が奨学金を受けていることを非監護親の婚姻費用額を減少させる要素になるとしています。
ただし、同決定では、奨学金の額を監護者の収入に加算する等まではしていません。
学費がかかっても、算定表の枠を超えた婚姻費用を定めることはできないことの根拠としているに過ぎません。
貸与型奨学金が養育費に影響しないとした大阪高裁平成30年3月15日決定
大阪高裁平成30年3月15日決定は以下のとおり述べます。
「抗告人Aが奨学金を受けている上,アルバイト収入(月額3万円程度)を得ることができるとの事情を考慮すべきである旨主張する。しかし,奨学金は抗告人Aにおいて将来返済しなければならないものであるから,これを試算額を減じる事情とみるのは相当ではない。」
このように貸与型奨学金について養育費に影響しないとしています。
奨学金があるがために養育費に加えて学費を出す必要がないとした東京高裁平成29年11月9日判決
東京高裁判決は、以下のとおり述べ、奨学金が出ることを、学費支払い義務がないことの一根拠としています。
「相手方は本人が私立高校に通学することに反対し、本人の私立大学進学も了解していなかったと認められること、通常の養育費に含まれる教育費を超えて必要となる費用は本人が大学進学後は奨学金等による援助を受けたり、アルバイトによる収入で補填したりすることが可能と考えられること、抗告人の収入はわずかであり相手方には扶養すべき子が多数いるという中で私立大学に進学した本人に対して奨学金やアルバイト収入で教育費の不足分を補うように求めることは不当ではないこと、前件審判時以降抗告人と相手方の収入はほとんど変化がないこと、前件審判においては、通常の養育費として公立高校の学校教育費を考慮した標準算定方式による試算結果を一か月当たり五〇〇〇円超えた額の支払が命じられていることからすると、
裁判例のまとめ
以上の裁判例からして、
ⅰ 奨学金があることは、養育費支払義務を否定する根拠となる場合もあるものの、
ⅱ 養育費として学費を払わなければならないという前提においては、奨学金(少なくとも貸与型)については、婚姻費用や養育費の額を減額させる一定の影響は有しているものの、そのまま収入としてカウントされるものでもない
ということができると思います。
3 新潟で離婚、婚姻費用、養育費のお悩みは弁護士齋藤裕へ
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