黒川元検事長に検察審査会が起訴相当決議 接待賭けマージャンと賭博罪

さいとうゆたか弁護士

1 黒川検事長の接待賭けマージャン報道

報道によると、黒川検事長が、産経新聞記者宅で接待賭けマージャンをしていたと件について検察審査会が起訴相当決議をしたとのことです。

検察庁が市民の声を重視するのであれば起訴がなされ、刑事裁判で手続きが行われることになります。

その際、黒川元検事長が争うかどうかはよくわかりませんが、接待賭けマージャンについては、興味深い論点も含まれていますので、以下、賭博罪の成否などについて検討します。

2 マージャン賭博と賭博罪の成否について

刑法185条は、「 賭博をした者は、五十万円以下の罰金又は科料に処する。ただし、一時の娯楽に供する物を賭かけたにとどまるときは、この限りでない。」と定めています。

ここで賭博とは、勝敗が偶然の事情、当事者の任意に左右することができない事情に関し、財物を賭けることを言います。

それではマージャンは偶然の事情に関するものと言えるでしょうか。

マージャンについては、かなり技量により勝敗が決まることは大きいでしょう。

しかし、一般的には、当事者の技能が結果に相当影響を与えるような場合でも、偶然性が残されている限りには賭博罪は成立するとされています。

この点、大審院昭和6年5月2日判決は、以下のように述べています。

「麻雀遊戯ノ勝敗ハ技術ノ優劣経験の深浅ニ関係スル所ナキニ非ズト雖其ノ勝敗ガ主トシテ偶然ノ事項に基ヅクモノナルコト亦公知ノ事実ニ属ス故ニ原判決カ金銭ヲ賭シタル麻雀遊戯ヲ以テ偶然ノ勝敗ヲ争ウモノト為シタルハ相当ニシテ」(多少、常用漢字に置き換えています)

つまり、マージャンは、主として偶然の勝敗で勝負が決まるので、麻雀賭博には賭博罪が成立するとしているのです。

本当にマージャンの勝敗が主に偶然の勝敗で決まるのか、争う余地はあるかもしれませんが、一応判例からするとマージャン賭博には賭博罪が成立しそうです。

3 接待であることはどのような意味を持つか

ところで、接待マージャンについては特殊な事情もあります。

つまり、接待する側が接待される側を勝たせようとしている以上、結論は見えているので、偶然で勝敗が決まるものではない、賭博ではないのではないかということです。

この点、偶然性は賭博に参加する人たち全員に必要とされます。ですから、逆に、詐欺的手段で勝とうとする当事者がいる場合、偶然の事情で勝敗が決まらないので賭博ではない、それは被害者の認識を問わないとされています。

以上から、理論上は、接待側が勝たせようとしている場合には、接待される側の認識はともかく、客観的には賭博罪が成立しないということになると思われます。

4 最後に

以上のとおり、仮に黒川検事長が賭けマージャンをしていたとしても必ずしも賭博罪が成立するとは限りません。

事実面、法律面において十分な検討が審議がなされることが求められるでしょう。

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