
1 賭けマージャンをめぐる黒川検事長の辞意表明
報道によると、東京高検の黒川検事長は、賭けマージャンをめぐる疑惑について事実を認め、辞意を表明したとのことです。
しかし、本当に辞任すれば事は済むのでしょうか?
以下、懲戒の基準などに触れながら考えます。
2 どの程度の懲戒処分がありうるか?
国家公務員法82条は以下のとおり国家公務員の懲戒について規定しており、これは検察官にも適用されます。
「職員が、次の各号のいずれかに該当する場合においては、これに対し懲戒処分として、免職、停職、減給又は戒告の処分をすることができる。
一 この法律若しくは国家公務員倫理法又はこれらの法律に基づく命令(国家公務員倫理法第五条第三項の規定に基づく訓令及び同条第四項の規定に基づく規則を含む。)に違反した場合
二 職務上の義務に違反し、又は職務を怠つた場合
三 国民全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあつた場合」
この懲戒処分の基準を具体化したのが「 懲戒処分の指針について」(平成12年3月31日職職―68)(人事院事務総長発)となります。
ここでは、以下のとおり、賭博についての規定もあります。
「(9) 賭博
ア 賭博をした職員は、減給又は戒告とする。
イ 常習として賭博をした職員は、停職とする。」
報道のとおり、黒川検事長が常習的に賭博をしていた場合、停職処分もありうることになります。
さらに、上記指針には、以下の記載があります。
「個別の事案の内容によっては、標準例に掲げる処分の種類以外とすることもあり得るところである。例えば、標準例に掲げる処分の種類より重いものとすることが考えられる場合として、
① 非違行為の動機若しくは態様が極めて悪質であるとき又は非違行為の結果が極めて重大であるとき
② 非違行為を行った職員が管理又は監督の地位にあるなどその職責が特に高いとき
③ 非違行為の公務内外に及ぼす影響が特に大きいとき
④ 過去に類似の非違行為を行ったことを理由として懲戒処分を受けたことがあるとき
⑤ 処分の対象となり得る複数の異なる非違行為を行っていたとき
がある。」
もし、賭けマージャンやタクシーでの送迎が接待であるとすると、国会公務員倫理規程5条の禁止する、利害関係者以外からの供応接待に該当する可能性があります(戒告・減給相当)。
ですから、検事長という高位職にあること(②関係)、公務内外に及ぼす影響が大きいこと(③関係)、複数の非違行為があること(⑤)からして、停職を超えて懲戒免職ということもありえます。懲戒免職となると退職金不支給の可能性が高くなります。
3 結論
以上より、黒川検事長については、賭博以外の事実が認定されると退職金不支給もありうるところです。
安易な辞任は認めるべきではなく、きちんと懲戒の手続きが行われるべきです。
もご参照ください。
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