子ども分の特別定額給付金は誰のもの?

1 「子ども六法」と特別定額給付金の帰属

現在、新型コロナの特別定額給付金をめぐり、「子ども六法」の記載をもとに、子どもが特別定額給付金の権利を主張する事例があることが話題となっています。

当然、この点についてぴったりくる裁判例や判例はないのですが、どう考えるべきか、検討してみます。

2 お金の誰の所有?

特別定額給付金は、国民1人10万円という基準で支給されます。

また、民法3条1項は、「私権の享有は、出生に始まる」としています。

よって、一見、子どもが1人10万円の給付金について権利を持つようにも思われます。

しかし、総務省サイトによると、特別定額給付金の目的は、「「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」(令和2年4月20日閣議決定)において、「新型インフルエンザ等対策特別措置法の緊急事態宣言の下、生活の維持に必要な場合を除き、外出を自粛し、人と人との接触を最大限削減する必要がある。医療現場をはじめとして全国各地のあらゆる現場で取り組んでおられる方々への敬意と感謝の気持ちを持ち、人々が連帯して一致団結し、見えざる敵との闘いという国難を克服しなければならない」と示され、このため、感染拡大防止に留意しつつ、簡素な仕組みで迅速かつ的確に家計への支援を行う。」こととされています。

ここでは家計を支えるという制度趣旨が記載されています。

そうであれば、1人10万円の支給がされているとしても、それはあくまで家族が多ければ多いほど家計負担が増すために家族の人数を基準とているだけであり、必ずしも1人1人に受給権を付与する趣旨ではないと考えられます。

また、お年玉などについても、特に年少の子どもについては、子どもの特有財産ではなく、親の共有財産とするのが裁判例の趨勢と思われます。この点については、お年玉の財産分与対象財産性についての記事をご参照ください。

そうであれば、家計を支えるわけではない子どもについて、特に年少の子どもについては、特別定額給付金の権利を有さないと考える方が自然ではないかと考えます。

これは子ども手当や児童手当が子どものものになるわけではないこととパラレルに理解できそうだと思います。

なお、仮に子どもが特別定額給付金についての権利があるとしても、子どもには権利能力がなく契約などの法律行為には同意が必要であることには注意が必要でしょう。また、親が10万円の処分について子どもに任せることができることにも注意が必要です(民法5条)。

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