
1 木村花さんの死去ときゃりーぱみゅぱみゅさんへの攻撃
報道によると、プロレスラーの木村花さんが亡くなられたということです。
お悔み申し上げます。
テラスハウス、テラハという番組をめぐり、SNS上で誹謗中傷がなされていたとも報道されています。
それと亡くなられたこととの関連性は不明です。
しかし、やはりSNSによる誹謗中傷は人を死に追いやりかねないものですし、しかも野放し状態と言ってもよい実態にあります。
木村花さんのことをきっかけにネット上での誹謗中傷について声をあげた、きゃりーぱみゅぱみゅさんまで攻撃にさらされているようであり、闇は深いようです。
以下、問題点を考えてみます。
2 SNSにおける名誉棄損に対する対応
私自身、2ch、5ch、爆サイなどの掲示板の名誉棄損事件、ツイッターやインスタグラムなどのSNSの名誉棄損事件を取り扱ってきました。
その経験からすると、SNSにおける名誉棄損事件には掲示板における名誉棄損にはない難しさがあります。
それは、SNSの企業が多くは海外にあることです。
弁護士は、SNS上で名誉棄損された被害者から依頼を受けると、プロバイダ責任制限法という法律に基づき発信者、つまり書き込んだ人の開示を求める手続きを行ったり、削除をもとめたりします。
その際、東京地裁が管轄となり、手続きを進めることができるのですが、申立書等の書類を翻訳したり、海外に送らなければならないこともあります。
そのため、日本にいる管理者相手の場合より余計に時間などがかかることになる場合があるのです。
SNS上で匿名で書き込んでいる者を相手にする場合、SNSの会社から情報の開示を受け、さらにそれをもとにプロバイダから個人名の開示を受けたりしますが、プロバイダがログを3ケ月程度しか保存しないこともあるため、上記の遅延により開示などが実現できない可能性が高まることになります。
このようなSNSにおける開示への障壁が、SNSを無法地帯とし、名誉棄損的な書き込みを許容している側面はあると考えます。
海外SNSについては裁判の送達先を国内に設置するなどの制度創設が必要です。
もちろん、国内の管理者が運営している掲示板などでも結構な名誉棄損がなされているので、問題は上記したところだけではありません。多くの掲示板では管理人の実名もわからない状態なので管理人の連絡先・氏名の明示義務を設ける、プロバイダにおける1年程度のログ保存の義務化など、削除や開示請求をしやすい制度の創設が必要だと思います。
今こそ、ひどい誹謗中傷を抑止するための制度を作るための議論が求められていると思います。
【追記】
総務省が、6月4日、開示対象の情報に携帯電話番号を追加する方針を明らかにしました。
これ自体は評価できますが、携帯電話番号では個人特定できない場合もありますし、プロバイダにおいて保存していない可能性もあるため、これだけでは十分ではありません。
上記した対策も追加でなされるべきと考えます。
さいとうゆたか法律事務所トップはこちらです。