セックスレスと離婚、慰謝料請求

離婚問題

1 セックスレスと離婚、慰謝料請求

セックスレスは今も昔も夫婦関係のトラブルの原因となってきました。

セックスレスの場合、法的にはどのような効果があるでしょうか?

例えば、岡山地裁津山支部平成3年3月29日判決は、以下のとおり述べ、性交拒絶があった場合について慰謝料の支払いを命じています。

原告・被告花千間の婚姻は、前記検討の結果がらすると、結局被告花子の男性との性交渉に耐えられない性質から来る原告との性交渉拒否により両者の融和を欠いで破綻するに至ったものと認められるが、そもそも婚姻は一般には子孫の育成を重要な目的としてなされるものであること常識であって、夫婦間の性交渉もその意味では通常伴うべき婚姻の営みであり、当事者がこれに期待する感情を抱くのも極当たり前の自然の発露である。

しかるに、被告花子は原告と婚姻しながら性交渉を全然拒否し続け、剰え前記のような言動・行動に及ぶなどして婚姻を破綻せしめたのであるから、原告に対し、不法行為責任に基づき、よって蒙らせた精神的苦痛を慰謝すべき義務があるというべきである。

しかして、原告に認められるべき慰謝料額は、本件に顕れた一切の事情を総合勘案し、金一五〇万円が相当である

 

東京地裁平成19年5月28日判決も、以下のとおり述べ、セックスレスについて慰謝料を認めています。

婚姻生活における性的関係の重要性からすると,このような被告の性的不能やその改善意欲の欠如は信義則上違法との評価を受け,不法行為責任を構成するものと解するのが相当である。

 

東京地裁平成29年8月18日判決は、1年弱の結婚生活中に1回もセックスがなかったというケースにおいて、以下のように判断して、慰謝料50万円を認めています。

夫婦間で一度も性交渉等がなかったというのは,婚姻後間もない夫婦の在り方としては一般的とは言い難く,原告において強い不安にさいなまれ,しかもこれを被告に伝えてもなお,被告の態度に特段の変化がなかったというのであるから,このような被告の行動に起因して,婚姻関係を継続することを断念するに至ったという原告の心情は首肯できる。加えて,上記認定事実,証拠(原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,単に被告との間で性交渉等がないというだけでなく,被告が原告に対して性的関心を示さず,性交渉はおろか接吻や抱擁等の身体的接触すらないことに起因して,夫婦の関係について相当の不安を感じており,被告においてもこのような原告の心情を察していたのであるから,性交渉そのものはなくとも,身体的な接触や言葉を交わすなどして夫婦間の精神的結合を深めるということも可能であるのに,被告にはそのような行動を起こそうとする兆しも見受けられず,このような事情に照らすと,本件においては,被告が原告に対する性的関心を示さない,又は原告においてこれを感じることができるような態度を示さないことにより,夫婦間の精神的結合にも不和を来たし,婚姻関係の破綻に至ったということができるから,このような経緯により婚姻関係の破綻を招来させた被告には,原告に対する不法行為が成立すると評価せざるを得ない。」

 

このように裁判例においてはセックスレスによる慰謝料が認められてきました。

必ずしも非難の要素を含まないセックスレスによる離婚についてはそれよりハードルが低いといえるでしょう。

ただし、セックスレスによる慰謝料については、性行為の自由との絡み、あるいは子どものいない夫婦が多くなっているという事情もあり、このまま裁判所が認め続けるかは予断を許さないと考えます。

上記東京地裁平成19年判決では、原告において子どもが欲しいと述べていたこと、原告からキスなど性行為に向けた積極的な行為をしていたことを踏まえて判断がなされています。

東京地裁平成29年判決では、キスや抱擁、言葉によるカバーすらなかったことを踏まえて判断がなされています。

ですから、仮に今後もセックスレスによる慰謝料が認められるとしても、子どもを設けることが結婚時点において共通認識とされていた、一方が性行為がなされるよう努力をしていた、性行為どころかキスや抱擁すらなかったというような事例に限定される可能性もあると考えます。

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