
1 テラスハウスで強制わいせつ事件があったとの報道
恋愛リアリティ番組「テラスハウス」の撮影中、出演している男性が、出演していた女性に強制わいせつを行ったことがあると報道されています。
この報道が事実かどうかはわかりません。
しかし、仮にこの報道が事実であった場合、男性の法的責任はもとより、運営側の法的責任も生じかねない事態だったといえます。
2 テレビ会社の参加者に対する安全配慮義務
まず、テレビ会社は、番組参加者の安全を配慮する義務を負うでしょうか。
この点、大阪地裁平成27年4月17日判決は、テレビ会社が企画する番組のリハーサルで参加者が熱中症となったという事故について、テレビ会社には安全配慮義務があるとしました。
よって、フジテレビが番組制作をしていたとすると、テラスハウスの参加者に対して安全配慮義務を負っていたといえるでしょう。
3 男性が女性の寝室に侵入しないよう配慮すべき義務
そして、その具体的内容については、女性参加者の寝室に男性参加者が侵入しないよう配慮すべき義務が認められると考えます。
この点、自衛隊員が駐屯地に侵入した過激派に刺殺されたことについて国の賠償責任が問われた事件についての最高裁昭和61年12月19日判決は、以下のとおり述べ、国の安全配慮義務違反、損害賠償責任を認めていますが、これが参考になります。
「上告人には、本件駐とん地司令及び本件警衛司令を履行補助者として、営門出入の管理を十全にして前示不法侵入を防止し、もつて動哨勤務中の一場士長の生命、身体に前示危険が及ばないよう保護すべき安全配慮義務の不履行があつたものといわざるをえず、前記事実関係からすると、上告人においてこれを履行していれば、本件事故の発生を未然に防止しえたというべきであるから、右事故は、上告人の右安全配慮義務の不履行によつて発生したものということができ、上告人は、右事故によつて被害を被つた者に対しその損害を賠償すべき義務があるものというべきである。」
同最高裁判決は、駐屯地への出入りに関するものですが、部屋への出入りについて扱いをかえる理由はないでしょう。
よって、番組制作者が、女性参加者の部屋への施錠や警備員による巡視などの措置をとっていなかったとすると、番組制作者に安全配慮義務違反があったとされる可能性は否定できません。
今回、この件が大きくクローズアップされたことを踏まえ、テレビ業界関係者には安全配慮義務の厳守をしていただきたいと思います。
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