大村知事のリコール手続

1 大村知事リコール運動と#大村知事リコールに反対します

報道によると、高須医師らが愛知県の大村知事リコール運動を立ち上げたということです。

それに対し、ツイッターでは「#大村知事リコールに反対します」のハッシュタグが立ち上がるなど、反対の動きも大きくなっています。

私自身は、表現の自由についての見識等において大村知事の見識を評価する者ですが、リコールすべきかどうかについては大村県政のことをよく知っている愛知県民が判断すべきことであり、発言すべきではないと思っています。

そこで、以下、リコールの是非ではなく、リコール手続きについて解説します。

2 リコール制度について

リコール制度については、地方自治法と地方自治法施行規則が定めています。

地方自治法81条は、有権者の一定割合以上の連署により、解職請求の代表者から選挙管理委員会に、長の解職請求をすることができるとしています。

愛知県の有権者は612万5982人と思われます(2020年6月2日現在)。

これを前提とすると、

(612万5982人-80万人)×1/8+40万人×1/6+40万人×1/3=66万5748人+6万6667人+13万3333人=86万5748人

ということで、86万5748人を超える人の署名が必要となります。

この要件を満たす請求があった場合、選挙管理委員会は選挙人の投票を行うことになります(地方自治法76条3項)。

その結果、過半数の同意があると、首長は失職することになります(地方自治法83条)。

3 リコールの困難さ

しかし、このリコールは単なる署名運動とは異なり、極めて厳重な手続きであり、容易にリコール請求がなりたつとは考えられません。

特に、選挙権を有する代表者あるいは委任者は、署名簿により署名を集めなければなりませんが(それ以外の人が集めたものは無効です)、そこには署名だけではなく、印を押してもらわないといけません。

街中で署名運動をしていて、署名をする人は通常多くはありません。

しかも、署名についてハンコを取り出し、押印まで求めるということになると、署名者の心理的ハードルはかなり高くなります(母印も可ですが、これもハードルは高いでしょう)。

また、署名簿の記載を選挙人名簿と照らし合わせ、確認ができない場合には、その人の署名は無効となります。

このような厳格な要件での署名を2ケ月以内で、しかも86万5748人以上集めないといけないのですから至難のわざです。

ネットでこちょこちょやっていて集まるような人数ではなく、愛知県で靴をすり減らして活動する人がかなり確保できないと難しい数字ということになります。

 

4 最後に

リコール運動をするのも自由ではあります。

しかし、実際に選挙管理委員会等に負荷をかけるのも事実です。

高須医師らには、本当に必要性があるのか、成算があるのか、よく考えて行動していただければと思います。

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