新型コロナの陰性証明書提出義務付けは許される? 新型コロナ法律相談 その28

さいとうゆたか弁護士

1 新型コロナの陰性証明書提出義務付けは許される?

報道によると、現在、少なくない会社において従業員に新型コロナの陰性証明書提出を求めているそうです。

もちろん、任意にあっさり要請するだけで従業員において簡単に拒否できるようなものであれば問題ないでしょう。

しかし、通常、労働者は使用者からの要請を簡単には拒否できず、事実上の強制となる可能性があります。

このように病気に関する情報を強制的に提出させることは法律上問題ないのでしょうか?

 

2 HIV感染情報に関する裁判例

この点、病院が労働者にHIV確認について質問し、感染を理由に内定を取り消したという事案に関する令和1年9月17日判決が参考になると思います。

同判決は、病院において労働者のHIV感染に関する情報を取得する必要があったかどうかについて以下のとおり判断を示しました。

「HIV感染の事実は取扱いに極めて慎重な配慮を要する情報であるから,そのような医療機関においても,HIV感染の有無に関する無差別的な情報の取得が許容されるものではない。そして,医療機関においては,血液を介した感染の予防対策を取るべき病原体はHIVに限られないのであるから,被告病院においてもHIVを含めた感染一般に対する対策を講じる必要があり,かつ,それで足りるというべきである。現に,医療機関の参考のために作成された本件手引きにおいても,HIV感染について他の感染症とは異なる特別な対応をすべきことが提唱されているわけではなく,「職業感染対策」として,B型肝炎,C型肝炎等の感染症と並んでHIV感染対策に特化した記述がわずかに存するのみである(甲17〔21,22〕)。そうすると,医療機関といえども,殊更従業員のHIV感染の有無を確認する必要はないばかりか,そのような確認を行うことは,前記特段の事情のない限り,許されないというべきである。」

つまり、HIV感染情報は極めて慎重に扱うべきである、職員にHIV感染者がいても感染対策一般を行えば足りるのであり職員のHIV感染調査は不要で許されないとしたのです。

その上で判決はプライバシー侵害による損害賠償を命じました。

これを新型コロナの陰性証明の提出強制についてみると、

ⅰ 新型コロナウイルスに感染した人については村八分にされるなど、ひどい差別がなされてきたこと⇒新型コロナに感染したという情報は慎重な扱いを要する情報である

ⅱ 新型コロナについては感染者がいることが明らかではない場合であっても職場に感染差がいるかもしれないという前提で対策を講じなければならないこと⇒いずれにしても感染対策はせざるを得ない

という事情があり、上記札幌地裁判決の判断に照らしても、新型コロナの陰性証明書の提出を強制することは違法であり、プライバシー侵害となる可能性があると言わなければならないでしょう。

 

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