
1 消費者庁がサンドラッグに景品表示法に基づく再発防止の行政処分
消費者庁は、大手ドラッグストアであるサンドラッグについて、実際には設定されていないメーカー希望小売価格をチラシに表示し、値引きしたかのように誤解させる宣伝をしたとして景品表示法に基づく再発防止処分を行いました。
この再発防止処分はどのような法的根拠に基づくものでしょうか?
以下、解説します。
2 景表法等の定め
不当景品類及び不当表示防止法(以下、「景表法」といいます)第五条は、以下のとおり定めます。
「事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号のいずれかに該当する表示をしてはならない。
二 商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの」
つまり、価格が著しく有利なものであると一般消費者に誤認される表示をするなどの要件を満たす行為が禁止されます。
どのような行為がこれにあたるかについては公正取引委員会の公表した「不当な価格表示についての景品表示法上の考え方」が参考になります。
ここでは、「希望小売価格を比較対照価格とする二重価格表示を行う場合に、製造業者等により設定され、あらかじめ公表されているとはいえない価格を、希望小売価格と称して比較対照価格に用いるときには、一般消費者に販売価格が安いとの誤認を与え、不当表示に該当するおそれがある。」としています。
つまり、メーカーが設定し、あらかじめ公表していない「希望小売価格」を表示し、それより販売価格が安いと思わせるような表示は不当な価格表示に該当する可能性があるということです。
そして、消費者庁の公表資料によると、「本件商品にはメーカー希望小売価格は設定されていなかった。」というのですから、景表法や「不当な価格表示についての景品表示法上の考え方」に従えば、景表法5条2号違反として再発防止の行政処分がなされたのはやむを得ないということになるでしょう。
実質的に考えても、高い希望小売価格と安い販売価格が並べられていれば誤解をする消費者がいても不思議はありませんし、消費者庁の認定する事実関係が正しいとするのであれば本件処分はやむを得ないと言えるでしょう。
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