イラネッチケーで視聴不可テレビの受信料の訴訟でNHK敗訴

さいとうゆたか弁護士

報道によると、東京地裁は6月26日、視聴不可のテレビについてNHKと受信契約を締結する義務がないとしてNHK敗訴の判決を言い渡しました。今回、NHKの放送を受信できないフィルターを設置したテレビをめぐって争われたようです。

放送法は,原告の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は,原告とその放送の受信についての契約をしなければならないとしています(64条1項)。

フィルターを設置して視聴不可のテレビについてNHKの放送を受信できると言えるのか、受信契約義務があるのかどうかについてはこれまでも裁判所で争われてきました。

例えば、NHKの放送デジタル信号を自宅に設置した場合に受信義務があるかどうかが問われた東京地裁平成28年7月20日判決は以下のとおり述べ、受信義務を認めました。

「被告は,本件工事を行ったことにより,本件受信機で原告の放送を受信することはできない状態にあると主張するが,被告の主張によっても,被告の自宅に原告の行う地上系によるテレビジョン放送を受信する機能を有するデジタル放送対応テレビが設置されているという外形的事実に変わりはなく,被告が本件工事の施工を依頼した者に復元工事を依頼するなどして本件フィルターを取り外せば,本件受信機で原告の放送を視聴することができるのであるから,本件フィルターが取り付けられたことにより原告の放送のデジタル信号が遮断されて現に原告の放送を視聴することができない状態にあるとしても,これをもって,被告が「受信機を廃止すること等により,放送受信契約を要しないこととなった」ということはできない。」
「したがって,本件解約届の提出によって本件契約が解約されることはなく,被告は平成28年3月分の受信料の支払義務を免れない。」

このように、放送を視聴することができない設備があるとしても工事をした者に頼めば簡単に取り外しができることを理由に受信契約締結義務を認めました。

今回の判決では受信できるように復元することが困難であるとして受信契約締結義務を否定したようです。

ですから上記東京地裁平成28年7月20日判決とも矛盾するようです。

自ら簡単に受信できるようにできるならともかく、専門の人に頼まないと受信できないテレビについて受信できるという要件を満たすというのはかなり不自然な解釈と思われ、そのような意味では今回の判決の方が文理としては素直に思われます。

いずれにしても、NHKとしても当然納得はせず控訴するでしょうから、決着は高裁、最高裁での判断待ちでしょう。

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