「東京差別」は許されない「差別」か?

さいとうゆたか弁護士

1 「東京差別」が話題に

現在、東京都のみ新型コロナウイルス感染者が高止まりしている状況であり、テレビ番組などで「東京差別」という言葉が取り上げられ、話題になっています。

この東京都民を新型コロナウイルス感染の危険性があるとして忌避しようとする「東京差別」は許されない「差別」なのでしょうか?

 

2 裁判例の概観

これまでも病気をめぐる差別は問題となってきました。

特にハンセン病患者に対する差別は激しく、多くの裁判例もあります。

例えば、ハンセン病患者の強制隔離の違法性が問われた熊本地裁平成13年5月11日判決は、

ⅰ 感染し発病するおそれが極めて低い病気である

ⅱ 患者が減ってきている状況があった

ⅲ 致死的な病気ではないこと

ⅳ プロミンという特効薬があったこと

などを理由に、強制隔離の必要性はないとし、最終的には国の責任を認めました。

新型コロナウイルスについていうと

ⅰ 感染し発病するおそれが極めて低いとはいえない

ⅱ 患者は減ってきているともいえない。特に東京都は高止まりとなっている

ⅲ 死亡することも結構ある

ⅳ 特効薬はいまだにない

という状況です。

このような状況に照らすと、法律による適正な手続きを経た上で感染者の行動の自由を最小限制約することが許されることは当然と言えるでしょう。

問題は感染が広がっている東京都で生活しているものの、感染をしているかどうかわからない東京都民の取り扱いです。

明確な法的枠組みがない段階で、役所や医療機関等法律でサービス提供が義務付けられているところで、東京都民であることだけを理由にサービス提供自体を拒否することは許されないと考えられます(もちろん、サービス提供にあたり、マスク着用や消毒を義務付けることなどはありうるでしょうが)。

しかし、それ以外の業種や一般の人々において、それぞれの従業員や顧客に対する安全配慮義務を尽くす観点、自身や家族を守る観点で、東京都民との接触を避けようとすることについて法的な責任があるとまでは言えない、「東京差別」と言われているものもそれぞれの人の正当防衛的な要素を含んでいるもので違法性に乏しいと考えます。

なお、本来は、これだけ感染者が高止まりしている状況ですから、新型インフルエンザ等特措法や新法により、透明な手続きにより東京都民の他の都道府県への移動規制を行うべきであって、そのような規制がないために東京都外の人たちが「東京差別」をしているとして逆差別されている状況にあるのではないかと思います。政府や都においては早急な対応をとるべきと思います。

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