遷延性意識障害・植物状態と生活費控除(交通事故)

さいとうゆたか弁護士

1 遷延性意識障害・植物状態と生活費控除(交通事故)

交通事故で後遺障害が残った場合、その程度に応じ労働能力が失われたとされ、失われた労働能力に対応する逸失利益が賠償の対象となることがあります。
特に遷延性意識障害については、1級3号という等級に認定され、100%の労働能力が失われるので、就労可能年数(通常は67歳、高齢者は平均余命の2分の1)の全収入について逸失利益が賠償されるのが通常です。

遷延性意識障害においては、就労が全くできないことに争いが生ずることはありません。

しかし、寝たきりになるため、かえって生活費がかからなくなるのではないか、その分の生活費を逸失利益から控除すべきではないか(生活費控除の問題)との主張がなされることがあります。

そこで以下、生活費控除の問題について検討します。

 

2 遷延性意識障害と生活費控除

例えば、京都地裁平成30年1月11日判決の事案で、被告は以下のような主張をしていました。

「原告の現在の状態は,意識障害が遷延する重度の昏睡状態,合併症として慢性肺炎の状態が続き,腹部に胃瘻を作成し,胃瘻カテーテルで栄養を取っている状態であり,生命維持のためには今後も入院が欠かせない状態である。そのため,原告には住居費,食費,日用品購入費その他の生活費は,将来の入院費でまかなわれ,それ以外に発生しない。そして,原告が一人暮らしであったことからすれば,50パーセントの生活費を控除すべきである。」

つまり病院で寝たきりで、住居費等もかからないので、その分を逸失利益から控除すべきだというのです。

これに対し、裁判所は、「入院中であっても,雑費等にかかる費用は必要となること,原告が今後も生活をしていく以上,その後の病状,医療環境及び介護福祉施設の状況等により,将来治療費及び将来介護費を超える生活費を要することは十分考えられることからすれば,原告の逸失利益を算定するに当たり生活費を控除するのは相当ではない。」として生活費控除を認めませんでした。

このように遷延性意識障害において生活費控除をしないのが裁判例の流れだと考えられます。

なお、生活費控除をしない場合でも、そのかわり雑費等はみとめられるべきではないとの主張がなされることもありますが、神戸地裁29年3月30日判決等においてそのような主張は認められていないところです(生活費控除を認めなかった裁判例としては、岐阜地裁令和2年12月23日判決等があります)。

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