遷延性意識障害・植物状態と平均余命(交通事故)

さいとうゆたか弁護士

1 交通事故による賠償における平均余命の意味

交通事故で後遺障害が残り、その後遺障害のために必要な介護費用等の賠償がなされる場合、平均余命までの費用の賠償がなされることになります。
ところが、遷延性意識障害・植物状態の場合、通常の場合に比べ余命が短くなるとして平均余命までの賠償を認めるべきではないとの主張がなされることがあります。
このような主張についてはどのように考えるべきでしょうか?

2 遷延性意識障害における余命についての裁判例

医療過誤に関するものですが、東京地裁平成31年1月10日判決は、以下のとおり述べ、遷延性意識障害の人の余命について、平均余命をもとに判断すべきとしました。

「平均余命について争いがあるところ、被告が引用する文献では15歳植物状態歴4年の患者の平均余命が12・2年であることから植物状態開始からの平均余命が16・2年と指摘しているものの、同文献は1981年(昭和56年)から1996年(平成8年)のアメリカにおけるデータであり、植物状態との定義も明らかではなく、原告X1にそのまま妥当するものとはいい難く、このほかに将来における原告X1の生存可能性について限定的に考えるべきとの被告の主張を裏付けるに足りる的確な証拠もないことに鑑みると、原告らの主張どおり、平均余命までの55・51年分(ライプニッツ係数18・6335)を用いるのが相当であり、被告の主張は採用できない。」

 

ところが、松山地裁西条支部平成29年3月30日判決は、以下のように述べ、遷延性意識障害患者はそれがない場合より余命が短くなるとし、それを前提とした賠償を認めています。

「原告X1は,本件事故による受傷により遷延性意識障害(いわゆる植物状態)に陥っているところ,本件事故がなかった場合の余命は,上記判決の認定事実等に照らし,遷延性意識障害に陥ることでさらに短縮されたものと推察されるものの,その短縮期間は,判断の精度の問題や困難さ等を考えると,控え目に2年と認めるのが相当であるから,本件事故による受傷後の余命は,症状固定後8年と認定することとする。」

 

このように、遷延性意識障害の場合の余命判断については平均余命によりなされるとは限りません。

保険会社側が出してきた余命についての資料などを適切に反論していく作業が極めて重要です。

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