ヘイト文書についてフジ住宅に賠償を命ずる判決

さいとうゆたか弁護士

1 フジ住宅に賠償を命ずる判決 ヘイト文書配布が問題になっていた訴訟で

報道によると、職場でヘイト文書を配布したとして従業員から損害賠償請求を受けていたフジ住宅について、大阪地裁堺支部は、7月2日、被告に110万円の損害賠償を命ずる判決を言い渡しました。

以下、ヘイト文書配布の問題性について検討します。

2 ヘイト文書配布の法的責任

この訴訟では、「韓国人はうそつき」などの雑誌記事が従業員に配布されたこと等が問題とされていたようです。

このようなヘイト文書配布の法的責任については、ヘイトデモ禁止仮処分を発令した横浜地裁川崎支部平成28年6月2日決定が参考になります。

同決定は以下のとおり述べ、ヘイトデモについては、個人を名指しをするものではなくとも人格権を侵害する不法行為となるとしています。

「専ら本邦外出身者に対する差別的意識を助長しまたは誘発する目的で,公然とその生命,身体,自由,名誉若しくは財産に危害を加える旨を告知し,または本邦外出身者の名誉を毀損し,若しくは著しく侮辱するなどして,本邦の域外にある国または地域の出身であることを理由に本邦外出身者を地域社会から排除することを煽動する,差別的言動解消法2条に該当する差別的言動は,上記の住居において平穏に生活する人格権に対する違法な侵害行為に当たるものとして不法行為を構成すると解される。」

今回はヘイトデモではなくヘイト文書配布が問題となっていますが、やはり韓国人労働者がいる中でそのようなヘイト文書を配布することは、上記決定の事例と同様に、労働者の名誉を棄損し、または著しく侮辱するものとして人格権を侵害する不法行為となる可能性が高いと言わなくてはなりません。しかも使用者対労働者という支配構造がある中での文書配布の事案であり、労働者の方で反論をしようにもしにくいですし、悪質性がより高いと評価されるものであったと考えます。さらに、通常はそのような文書を配布する業務上の必要性は乏しいでしょうから、違法性がないとされる余地も同様に乏しいと思われます。

ヘイト文書配布について表現の自由に該当するとの主張もあったようですが、職場という空間は私的な空間と違い労働者に対する配慮が必要な空間です。表現の自由でヘイト文書配布は正当化されえないでしょう。

そのような意味で今回の判決については穏当なものと言えるのではないかと考えます。

フジ住宅においては是非とも判決を踏まえて職場環境の改善に取り組んでいただければと思います。

さいとうゆたか法律事務所トップはこちらです。

 

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です