遷延性意識障害・植物状態と入院慰謝料(交通事故)

さいとうゆたか弁護士

1 交通事故の入通院慰謝料

交通事故で入通院した場合、その期間等に応じた慰謝料が払われることになります。
民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準上巻(基準編)2020(いわゆる赤本)では、入院について、別表Ⅰで
1月 53万円
2月 101万円
3月 145万円
4月 184万円
5月 217万円
6月 244万円
7月 266万円
8月 284万円
9月 297万円
10月 306万円
11月 314万円
12月 321万円
としています。
その上で、「傷害の部位、程度によっては、別表Ⅰの金額を20%~30%程度増額する」、「生死が危ぶまれる状態が継続したとき、麻酔なしでの手術等極度の苦痛を被ったとき、手術を繰り返したときなどは入通院期間の長短にかかわらず別途増額を考慮する」とされています。

対して、交通事故損害賠償算定基準27訂版(いわゆる青本)では、入院について、
1月 32万円から60万円
2月 63万円から117万円
3月 92万円から171万円
4月 115万円から214万円
5月 135万円から252万円
6月 153万円から284万円
7月 168万円から312万円
8月 181万円から336万円
9月 191万円から356万円
10月 200万円から372万円
11月 207万円から385万円
12月 212万円から395万円
としつつ、「脳・脊髄の損傷や多数の箇所にわたる骨折、内臓破裂と伴う傷害の場合は、通常生命の危険があることが多く、これらの症例の場合で絶対安静を必要とする期間が比較的長く継続したとき、あるいは症状の回復が思わしくなく重度の後遺障害が残り、あるいは長期にわたって苦痛の大きい状態が継続したときなどは、特に症状が重いものとして上限の2割増程度まで基準額を増額してもよいと思われる」としています。

このように赤本、青本とも、重度の傷害がある場合には入院慰謝料が通常より高額となることを認めています。
それでは遷延性意識障害・植物状態の場合の入院慰謝料はどのくらいとなるでしょうか?

2 遷延性意識障害・植物状態と入院慰謝料

近年の遷延性意識障害の裁判例における入院慰謝料は以下のとおりです。

東京地裁平成31年1月10日判決       6か月で244万円(医療過誤ケース。ほぼ原告主張どおり)
高松地裁丸亀支部平成30年12月19日判決  717日間で360万円(原告主張どおり)
松山地裁西条支部平成29年3月30日判決   1年4か月余で340万円(425万円請求。裁判所は受傷内容等を考慮したとしている)
大阪地裁平成28年3月23日判決       6か月で300万円(原告主張どおり。骨折多数あり)

最後の大阪地裁判決では青本の上限を上回る慰謝料となっていますが、それ以外については赤本基準におおむね沿った金額となっています。
大阪地裁の事例についても、多数の骨折があるので、遷延性意識障害であることがどの程度考慮されたのか判然としないものです。
そもそも赤本基準でしか請求していないため赤本基準で認めるようになっているのか、上乗せした金額を請求すればそれなりに上乗せしてもらえるのか、松山地裁西条支部判決のように上乗せは認められないのか、不分明なところが残ります。
この点、裁判所は、意識がないから苦痛も少ないと思っているのかもしれません。
遷延性意識障害においては、青本の上限の2割増しで請求し、かつ、遷延性意識障害被害者の苦痛についても適切に立証するという姿勢が重要だと思われます。

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