山口県知事がユーチューバーへずまりゅう氏を名指ししたことの違法性

さいとうゆたか弁護士

 報道によると、山口県知事が、会見で、ユーチューバーへずまりゅう氏と接触していた人が新型コロナウイルスに感染したと発表したとのことです。
 
 このような発表は個人情報保護ないしプライバシー保護上許されるでしょうか?
 
 山口県個人情報保護条例は、個人情報の第三者提供が許される場合について以下のとおり定めます。
  
第六条 実施機関は、個人情報(特定個人情報(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(平成二十五年法律第二十七号。以下「番号法」という。)第二条第八項に規定する特定個人情報をいう。以下同じ。)を除く。以下この項及び次項、第七条第三項並びに第三十七条第一項において同じ。)を取り扱う事務の目的以外の目的のために個人情報を当該実施機関の内部において利用し、又は当該実施機関以外の者に提供してはならない。ただし、次の各号のいずれかに該当するときは、この限りでない。
一 本人の同意がある場合又は本人に提供する場合であって、本人又は第三者の権利利益を不当に侵害するおそれがないとき。
二 法令等に定めがある場合であって、本人又は第三者の権利利益を不当に侵害するおそれがないとき。
三 出版、報道等により公にされている場合であって、本人又は第三者の権利利益を不当に侵害するおそれがないとき。
四 人の生命、身体又は財産を保護するため緊急かつやむを得ない必要があるとき。
・・・
七 前各号に掲げる場合のほか、本人以外の者に提供することが明らかに本人の利益になる場合その他個人情報を提供することについて特別の理由のある場合であって、本人又は第三者の権利利益を不当に侵害するおそれがないとき。

これらのうち、関連しそうなのは4号です。

新型コロナとの関連でいうと、その感染者が不特定多数の人と濃厚接触しており、感染者の立ち回り先など個人特定につながる情報を公表しないと濃厚接触者の受診などを促すことができないような場合には、最低限の情報を公表することが許されると考えます。

しかし、例えば、今回の件でいうと、へずまりゅう氏の立ち寄りと日時を公表する以上に個人名まで公表する必要があったのか疑問があります。

仮に、立ち寄り先と日時の公表で濃厚接触者の受診を促すことができるかどうかの検討が不十分なまま個人名の公開に至ったとすると、山口県個人情報保護条例との抵触のおそれがあると言わなくてはなりません。

もちろん、感染防止は重要です。しかし、新型コロナウイルス感染が重大な差別を招きかねない以上、自治体にはバランスの取れた個人情報取り扱いが求められます。

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