今治市の新型コロナ感染者中傷ビラの法的問題

さいとうゆたか弁護士

今治市で、新型コロナ感染者を中傷するビラが配布されているのが発見されたということです。

到底許されることではありませんし、ビラ配布により法的責任が発生する可能性もあります。

まず、刑事責任については、名誉棄損罪に問われる可能性があります。

刑法第二百三十条は、以下のとおり規定します。
「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀き損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。
2 死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない。」

今回の中傷ビラは、新型コロナ感染という「事実」を、ビラ配布という「公然」の方法で摘示し、よって対象者の社会的評価を低下させ、「名誉をき損」したと言えるので、名誉棄損罪に該当する可能性があります。
新型コロナウイルスに感染したというだけで非難される風潮があることを考えると、新型コロナウイルス感染という事実は対象者の社会的評価を低下させるものと言えるでしょう。

なお、刑法第二百三十条の二は、「前条第一項の行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。」としています。
しかし、感染者名の公表が感染防止につながる状況があるとも思われず、かつ、ビラの内容からしても公益をはかる目的があったとは考えられず、名誉棄損罪が成立する可能性が高いと考えます。

また、民事責任として損害賠償責任が発生する可能性もあります。

名誉棄損による損害賠償責任についても、刑事責任と同様、不特定多数に対し人の社会的評価を低下させる具体的事実を摘示した場合には名誉棄損として損害賠償の対象となります。記載事実が真実で、かつ、公共のレ利害に関するもので、かつ、公益目的がある場合には損害賠償責任は認められません。しかし、今回のビラについて公益目的は認められにくいでしょうし、損害賠償の対象となる可能性が高いと思われます。慰謝料額については、内容面での悪質性からそれなりの高額となる可能性は否定できないでしょう(最終的には配布された枚数等の事情によって金額が決まることになります)。

今後、同様の人権侵害がなされないよう、きっちりと法的責任の追及がなされることを期待します。

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