かんぽ生命保険の不適切契約をめぐり573人が懲戒処分

さいとうゆたか弁護士

1 日本郵便役員ら573人が懲戒処分に、6人は懲戒解雇に

報道によると、かんぽ生命保険の不適切契約をめぐり、日本郵便役員や573人が懲戒処分に付されたとのことです。
これは、かんぽ生命保険の不適切契約をめぐり、2019年12月27日には、金融庁から業務停止処分まで出されたことを踏まえたものです。
処分の主な理由は、かんぽ生命及び日本郵便が、かんぽ生命の保険商品に関し、不適正な募集行為(顧客に不利益になる、又は顧客にとって合理性のない契約であって当該顧客の意に沿わないものに係る保険募集)が認められたことです。
今回の懲戒処分中には6人の懲戒解雇も含まれています。
このような理由での懲戒解雇は許されるのでしょうか?

2 裁判例

不適切な保険契約締結による懲戒解雇が問題となった事件に関する判決として、東京地裁平成24年5月11日判決があります。
同判決は、
ⅰ 原告において,各被保険者が診査を受けることを予定しないで当該各契約の申込みを受け,被保険者本人の診査を受けさせることのないまま当該各契約を締結させた
ⅱ 原告が、保険契約締結から数年経過後に解約,払済,減額等の手続がとられ,ほぼ同時期に新たに同種の保険契約が締結される(加えて,そのうちの相当数において契約者貸付を受け保険料の支払等に充当する。)という,一般的にみて既存契約を継続するよりも保険契約者等が経済的に不利益を被る態様での保険契約締結等を行うに際し,その不利益性や危険性を十分に認識していたにもかかわらず,故意又は重大な過失により,保険契約者に対しその点について十分な説明をしていなかった
ⅲ 各保険契約は,相続時精算課税制度の利用を企図して締結されたものであるにもかかわらず,いずれについても必要書類の提出がされなかったことから,同制度の適用を受けられなかったものであるところ,原告は,契約者らに対し,同制度の適用を受けるために必要な手続について十分な説明を行わず,その結果,同制度の適用を受けることができなかった
等の不適切勧誘等があった事案について、懲戒解雇を有効としました。

保険業者において、不適切な勧誘行為がなされた場合、業務停止等の重大な処分に結びつきかねないことから、東京地裁判決の判断はあながち不当とは言えない可能性があります。

他方、かんぽ生命の関係では、組織的に不適切勧誘がなされていた土壌の中で、6人だけを懲戒解雇にするということであれば、件数等において極めて悪質である等の事情がなければ懲戒解雇の効力に疑念が生じかねないと考えます。

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