臨時国会召集は憲法上の義務

さいとうゆたか弁護士

報道によると、立憲民主、国民民主、共産等の野党4党は、新型コロナウイルスの感染対応などに関し審議する必要があるとして、憲法53条に基づき臨時国会の召集を求めました。

憲法53条は、「内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。」としています。

しかし、現時点で政府側は臨時国会を召集するとは述べていません。

臨時国会の召集を要求したのに速やかに召集されなかったとして議員らが国家賠償請求を求めた事件に関する那覇地裁令和2年6月10日判決は、国家賠償請求は棄却していますが、以下のとおり述べ、憲法53条後段による臨時国会の召集は法的義務だとしています。

「憲法53条前段の規定に基づく内閣による臨時会の召集は,それ自体,内閣が時々刻々動く政治状況・政治情勢,審議すべき事項等を勘案した上で,召集の可否及び召集時期を定めてこれを行うものであり,高度の政治性を有するものであることは否定できない。しかしながら,憲法53条後段に基づく内閣の臨時会の召集については,議院の総議員の4分の1以上の要求がある場合において,内閣が憲法上の要請に基づき行う必要があるものであって,これは単なる政治的義務と解されるものではなく,憲法上明文をもって規定された法的義務と考えられる。」

「憲法53条後段に基づく適法な召集要求があった場合,内閣としては,臨時会の召集を行う憲法上の義務を負うものであるところ,例えば,通常国会の開催時期が近接しているとか,内閣が憲法53条前段に基づき独自に臨時会を開催するなどの特段の事情がない限り,同条後段に基づく臨時会を召集する義務があるのであって,上記のような特段の事情の有無を考慮する以外に,臨時会を召集するかしないかについて,内閣に 認められる裁量の余地は極めて乏しいものと考えられる。」

 

また、召集時期については、「召集の要求がされてから合理的期間内に臨時会を召集する義務があると解される」としています。

ですから、政府としては、事務手続きなどに必要な期間後に臨時国会を召集すべきです。

経済と人命についてどのようにバランスを取るべきか、重大な決断がなされなければならないタイミングです。

政府には、法的義務に従い、8月早々に臨時国会を召集していただきたいと思います。
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