アドアーズ池袋でのツイステ整理券配布で将棋倒し・ドミノ倒し 法的責任は?

さいとうゆたか弁護士

アドアーズ池袋でのツイステ整理券配布で将棋倒しが発生し、ケガ人も出たとの情報がネットで発信されています。

このような将棋倒し、ドミノ倒しの事例について、イベントなどの主催者に安全確保の義務があり、それに違反があり人の死傷の結果が発生すれば過失致死等の刑事責任が問われることがあることは最高裁昭和42年5月25日判決の示すところです。

同判決は、弥彦神社の二年参りでの将棋倒し事故について、以下のとおり、例年の集客の状況等から多数の参詣客が来ることが想定されていたので、餅巻きを企画した神社職員には相当数の警備員を配置し雑踏整理などを行うべき義務があったのにこれをしなかったとして、神社職員に過失致死の成立を認めました。

「右二年詣りの行事は、当地域における著名な行事とされていて、年ごとに参拝者の数が増加し、現に前年〔昭和三〇年元旦〕実施した餅まきのさいには、多数の参拝者がひしめき合つて混乱を生じた事実も存するのであるから、原判決認定にかかる時間的かつ地形的状況のもとで餅まき等の催しを計画実施する者として、参拝のための多数の群衆の参集と、これを放置した場合の災害の発生とを予測することは、一般の常識として可能なことであり、また当然これらのことを予測すべきであつたといわなければならない。したがつて、本件の場合、国鉄B線の列車が延着したことや、往きと帰りの群衆の接触地点が地形的に危険な右随神門外の石段付近であつたこと等の悪条件が重なり、このため、災害が異常に大きなものとなつた点は否定できないとしても、かかる災害の発生に関する予見の可能性とこれを予見すべき義務とを、被告人らについて肯定した原判決の判断は正当なものというべきである。そして、右予見の可能性と予見の義務とが認められる以上、被告人らとしては、あらかじめ、相当数の警備員を配置し、参拝者の一方交通を行なう等雑踏整理の手段を講ずるとともに、右餅まきの催しを実施するにあたつては、その時刻、場所、方法等について配慮し、その終了後参拝者を安全に分散退出させるべく誘導する等事故の発生を未然に防止するための措置をとるべき注意義務を有し、かつこれらの措置をとることが被告人らとして可能であつたことも、また明らかといわなければならない。それにもかかわらず、被告人らが、参集する参拝者の安全確保について深い関心を寄せることなく、漫然餅まきの催しを行ない、雑踏の整理、参拝者の誘導等について適切な具体的手段を講ずることを怠り、そのために本件のごとく多数の死者を生ずる結果を招来したものであることは、原判決の認定するとおりであり、結局、本件について被告人らを過失致死の罪責に問擬した原判決の判断は正当というべきである。)」

今回の将棋倒しについても、多数の集客が想定されていたのであればその時点で相当数の警備員を配置し、客の動きを整序すべき義務が認められる可能性があります。ですから、事前の集客等の想定次第では刑事責任や民事責任が発生する可能性はあると考えます。

アドアーズ側には原因の徹底調査と必要な場合の補償等の措置を期待したいと思います。

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