冷凍餃子,唐揚げは手抜きか?裁判例から考える

さいとうゆたか弁護士

1 「母親ならポテトサラダくらい作ったらどうだ」、唐揚げ手抜き発言など、手抜き料理呼ばわりの発言が話題に

「母親ならポテトサラダくらい作ったらどうだ」との発言、唐揚げ手抜き発言、冷凍餃子を食事で出すことが手抜きかどうかなどが議論になっています。

冷凍食品やコンビニ弁当を食事に出していたことをとらえ、家事や育児をまともにしていないという主張は離婚事件ではよく見かけるところです。

そこで、以下、裁判所において冷凍食品などを出すことが手抜きととらえられてきたかどうかみてみます。

2 冷凍食品や手抜き料理をめぐる裁判例

東京地裁平成16年3月24日判決は、親権が争われた離婚事件についての判決です。

夫は、妻について、「子供の養育については,食事に冷凍食品を多用するなど安直」だと非難し、夫が親権を取得すべきとしました。

裁判所は、このような被告の主張について、「被告は,原告の家事・育児の能力について問題があるように述べるが(各陳述書),被告の要求水準に達していないということであり,被告自身と比べて能力が低いとは言えない。」として排斥しています。

つまり、夫より妻の家事・育児能力がないわけではないし、冷凍食品を批判するのは単に夫の要求水準を満たしていないだけということです。

なお、冷凍食品ではありませんが、食事の手抜きが争われたものとしては東京地裁平成15年3月25日判決があります。同判決は、離婚事由の有無が争われた離婚事件についての判決です。

同訴訟で、離婚を求める夫(弁護士)は、「原告は,被告が家事(特に食事の支度)について手抜きをしていて改善しようとする意欲がなく,育児においても大量の市販の離乳食を利用している」などの主張をしていました。

それに対し、判決は、「すなわち家事や育児に向上心がない,原告の仕事,健康等に対する配慮が全くない,育児において物質的な豊かさや人工的な環境を好む,絶対に謝らない,といった原告の主張に係る事実関係についてみても,被告も自分なりに努力していたものと評価され,かつ,社会には様々な性格や考え方の人たちが存在するのであって,被告の行動が常識的にみて強い批判や非難に値するものであったとは解されない。原告がこれらの点について強い不満や不快感,違和感を持っていたことは事実であるが,そのような感じ方は被告の行動を評価する原告の側の基準によればそうだといえるに止まるものと考えられる。」等として、離婚を認めませんでした。

やはり、家事の手抜きとの主張は、夫側の要求水準を満たしていないだけだとして、受け容れられていません。

私の感覚としても、家事の手抜きという主張が意味を持つのは例外的な場合に限られると思います。

冷凍餃子、唐揚げ、スーパーで購入したポテトサラダの利用が手抜きであるという主張は、世間と同様、裁判所でも受け入れられにくいと思いますので、発言には注意が必要です。

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