おかみさん強要の法的責任

さいとうゆたか弁護士

式秀部屋でおかみさんが力士に古米を食べることを強要し、それが力士脱走につながったと報道されています。

実際にそのようなことがあったかどうかは不明であり、おかみさんからの主張もきちんと取り上げられるべきでしょう。

それはおくとして、相撲の部屋で古米を食べることを強要するとしたらどのような法的問題があるでしょうか?

そもそも力士については労働者かどうかが問題となりますが、強い支配従属性があることから労働者、あるいはかなりそれに近い立場にあると考えます。

そして、使用者が労働者を寮に住まわせる場合について、労働基準法第九十六条は、「使用者は、事業の附属寄宿舎について、換気、採光、照明、保温、防湿、清潔、避難、定員の収容、就寝に必要な措置その他労働者の健康、風紀及び生命の保持に必要な措置を講じなければならない。2 使用者が前項の規定によつて講ずべき措置の基準は、厚生労働省令で定める。」としています。

よって、部屋住まいの力士については労働基準法96条に沿った、あるいは準じた対応が必要だと考えます。

ところで、寄宿舎について具体的な基準を定める事業附属寄宿舎規程では、食事に使われる食材についての規定はありません。

しかし、労働基準法96条1項からして、使用者は、労働者に食事を提供する場合には、不適切な食材を提供してはならないと考えられます。

それでは古米は不適切な食材でしょうか?

路上生活者を寮に入寮させ、生活保護を申請させ、その生活保護費を全額受領していた者が、入寮者に極めて劣悪な生活を遅らせていたとして慰謝料の支払いを命じた、さいたま地裁平成29年3月1日判決は、品質の悪い米を食べさせていたことも理由に慰謝料を認めています。

同判決では、この米のことについて、「実際にD荘に入居していた原告Aは,米そのものが古古米のような米で,砕けたような米であったと供述しており」としており、古米のような米だったとしています。

このように、古米を食べさせることは不適切な食材の提供に該当すると考えます。

以上より、おかみさんが力士に古米を食べさせることは、不適切な食材を提供することにより劣悪な生活環境に置いたことにつながり、労働基準法96条の趣旨に反し、違法であり、場合によっては慰藉料の問題も発生しうると考えます。

今回はそもそもおかみさんが古米を食べさせたかどうかも不明ですが、日本相撲協会には徹底調査を期待したいと思います。

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