進学費用・留学費用と特別受益(相続)

相続問題

1 特別受益とは?

民法第九百三条は、「共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、第九百条から第九百二条までの規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。」と規定しています。

つまり、相続人の中に、被相続人から生前等にお金などをもらっていた人がいた場合、そのお金を計算上遺産に戻す処理をし、その上で遺産分割の金額を計算することになります。

相続人は子どもAとBの2人、遺産が1000万円、Aが被相続人の生前に家の購入費用500万円を援助してもらっていた場合、500万円を特別受益とし、1000万円+500万円=1500万円を分割対象とします。その場合、Aは750万円、Bは750万円取得できますが、Aは既に500万円を家の購入費用として受け取っているので、新たに受け取ることができるのは750万円-500万円=250万円となります。

 

2 進学費用と特別受益

進学費用も特別受益となる場合があります。

大学進学費用と特別受益

山形地裁令和1年12月19日判決は、

原告X1は,亡父に,I大学の学費等の一部を出してもらっていたところ,原告X1以外の亡父の子は,誰も大学に進学していないこと(同(42))に照らすと,亡父による学費の負担は特別受益に当たるといえる。また,同(40)のとおり,原告X1は,高校を卒業後,I大学に入学するまでの間,予備校に通っており,その費用も亡父に出してもらっていて,その額は昭和52年について10万円,昭和53年について20万円であったところ,これもI大学の学費と同様,特別受益に当たるといえる。」として、1人の子だけが大学進学したケースで、予備校や大学の学費について特別受益性を認めました。

ただし、同判決は、「被告Y1は,原告X1が予備校及びI大学に通っていた時の生活費についても,亡父が負担しており,これも特別受益に当たると主張するが,このような生活費の負担は,親の子に対する扶養義務の履行ともいえるのであって,相続分の前渡しとは解し難いから,特別受益に当たると認めることはできない。」として、在学時の生活費分については特別受益性を認めませんでした。

しかし、裕福で教育水準の高い家庭、子どもがみんな進学したような家庭については、大学進学学費が扶養の一部とされ、特別受益とはされないことがあります。

大学院進学費用と特別受益

そうはいっても、大学院進学費用については扶養の一部とされることは少なく、特別受益の対象となることが多いと思われます。

この点、名古屋高裁令和1年5月17日決定は、大学院進学費用・留学費用を扶養の一部とし、特別受益であると認めませんでした。

同決定は、

・被相続人一家は教育水準が高く、その能力に応じて高度の教育を受けることが特別なことではなかったこと

・大学院に進学し、留学した相続人(Xといいます)において、学者、通訳者又は翻訳者として成長するために相当な時間と費用を要することを被相続人が許容していたこと

・Xが自発的に被相続人に相当額を返還していること

・被相続人がXに対して援助した費用の清算や返済を求めるなどした形跡がないこと

・被相続人は生前経済的に余裕があり、他の相続人やその妻に対しても高額な時計を譲り渡したり、宝飾品や金銭を贈与したりしていたこと

・他の相続人も一橋大学に進学し、在学期間中に短期留学していること

などとして、大学院進学費用・留学費用を特別受益に該当しないとしました。

 

このように特別受益に該当するかどうかは、その支出自体の性質のみならず、被相続人一家の経済的状況、他の相続人の進学状況等によっても左右されることがあるので、総合的に検討することが必要です。

 

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