noteからのIPアドレス流出の法的問題

さいとうゆたか弁護士

コンテンツ配信サービスnoteを営むnote社は、noteにおいて記事投稿者のIPアドレスがソースコードで第三者に見られてしまう不都合が見つかったとして公表をしました。

IPアドレスは、インターネット等に接続するパソコン等に割り当てられる識別符号のことを言います。
このIPアドレスには、常に特定のコンピューターにIPアドレスが割り当てられる固定IPアドレス、通信等の度にコンピューターにIPアドレスが割り当てられる動的IPアドレスがあります。

例えば、ネットで誹謗中傷を受けた場合、従来はコンテンツプロバイダから携帯電話番号の開示を受けることができませんでしたから、まずはIPアドレスを開示してもらうという流れになっていました。
その上で、携帯電話会社等のプロバイダにさらに開示請求をし、IPアドレスをもとに書き込んだ者の氏名等の開示を受けていました。この開示については、従来は任意に開示される例は乏しく、訴訟等を起こし、当該書き込みが権利侵害であることを立証し、開示してもらう必要がありました。
なお、固定IPアドレスの場合、プロバイダにおいて比較的容易にIPアドレスから書き込んだ者の氏名等を特定することができます(マンション専業プロバイダ等、そもそもIPアドレスと個々のパソコンが結びついていないような場合には困難があります)。
他方、動的IPアドレスの場合、常にIPアドレスから書き込んだ者の氏名等を特定できるわけではなく、特定できない場合も多く存在します。

いずれにしても、通常はIPアドレスを見ただけで、一般人においてそれが誰のものであるかを特定することは困難です。プロバイダにIPアドレスから個人名等を特定してもらうためには訴訟等で権利侵害の立証をする必要がありますので、権利侵害に該当する書き込みがなされたような場合を除き、IPアドレスから個人名が推認されないのが通常です。

しかし、IPアドレスが、A媒体での書き込みとB媒体での書き込みを紐づけし、結果的に匿名の書き込みをした人が誰かを推認させる場合はありうるところです。
また、マンション専業プロバイダ等一部マイナープロバイダについては、IPアドレスからプロバイダが判明すること自体で書き込んだ人の住所などを大まかに特定できる可能性もあります。

ですから、IPアドレスによりただちに個人が特定できないから問題がないということではなく、個人識別に結びつきうるIPアドレスを第三者からみられる状態に置いたことが債務不履行となり、その結果として個人が特定される等の損害が発生した場合、note社が賠償責任を負う可能性があると考えます。

note社には原因の徹底解明と必要なフォローを期待します。

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