執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)
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1 養育費・婚姻費用の算定と私立高校の学費
養育費・婚姻費用は、裁判所の算定表により算定されるのが通常です。参照:養育費算定表
しかし、当該算定表は、公立高校に通う場合を前提に計算がなされています。
そのため、私立高校に通う場合には補正が必要な場合があります。
以下、計算例を見ていきます。
2 私立高校の学費をどのように養育費・婚姻費用において考慮するか
東京家裁平成27年6月26日審判は、以下のとおり、婚姻費用算定にあたり、私立高校の学費を考慮しています。
「一年次の学費等(入学金を除く。)一一九万六〇〇〇円から算定表で考慮された一五歳以上の学校教育費相当額一人当たり年間額三三万三八四四円(判例タイムズ一一一一号二八五頁以下参照)を控除した八六万二一五六円を申立人及び相手方の収入で按分すると、相手方が算定表で算出された婚姻費用に加えて負担すべき学費は月額三万〇六一五円(八六万二一五六円×三〇〇万円÷(三〇〇万円+四〇四万〇二二五円)=三六万七三八四円、三六万七三八四円÷一二=三万〇六一五円(小数点以下切り捨て))となる)」
これは、
ⅰ 私立高校の学費-算定表が前提とする学費(33万3844円)の差額86万2156円を算出
ⅱ この86万2156円を、権利者・義務者の収入に応じて按分
というプロセスで計算をするものです。
水戸家裁令和2年6月22日決定も、「上記研究(司法研究報告書第70輯第2号「養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究」のこと・・・引用者注)によれば,標準算定方式における公立学校教育費として,世帯年収761万7556円に対する25万9342円(上記研究報告書39頁,45頁)が考慮されているから,本件当事者においては,その世帯収入(約1087万円)に照らし,約37万円が公立学校教育費として考慮されているといえる。」
「したがって,長男の学費等のうち75万円(=112万円-37万円)と長女の学費等のうち40万円(=77万円-37万円)を申立人と相手方の基礎収入に応じて按分して負担すべきである。相手方は,上記超過部分のうち87%(≒382万8000円[≒957万円×0.4]÷382万8000円[≒957万円×0.4]+57万2000円[≒130万円×0.44])を負担することになる。したがって,申立人が長男,長女のために負担した学費等のうち,相手方が負担すべき部分は,長男につき月額5万4000円(≒75万円×0.87÷12),長女につき月額2万9000円(≒40万円×0.87÷12)となる。」としており、上記東京家裁と同様の判断を示しています。
このように、私立高校の学費は、学費から算定表で考慮された学校教育費相当額を引き、その額を双方の収入に応じて按分して決定することになります。
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