半沢直樹第6回 整備士の他職種への配転

さいとうゆたか弁護士

半沢直樹第6回では、帝国航空で整備士等を他職種に配転することの困難さが描かれます。

一般論として、会社は、労働者を広範囲に配転し、職務変更させる権限を有しています。

菅野和夫著「労働法第12版」727頁は、「長期的雇用を予定した正規従業員については、職種・職務内容や勤務地を限定せずに採用され、企業組織内での従業員の職業能力・地位の発展や労働力の補充・調整のために系統的で広範囲な配転が行われていくのが通例である。このような長期雇用の労働契約関係においては、使用者の側に、人事権の一内容として労働者の職務内容や勤務地を決定する権限が帰属するのが通例である」としています。

しかし、契約において職種限定されている場合、会社といえども職種を一方的に変更することはできません。

この職種限定は、契約書に書いていなくても認められる可能性があります。

広島高裁岡山支部平成31年1月10日決定は、外科医師から他職種への配転について、「一般に,専門医認定や指導医認定,技術認定を受けるまでには相当な時間を要するため(甲54から61まで),医師が自らの専門分野を変えることは現実的に困難であることが認められる。」、「前提事実のとおり,抗告人は,平成4年4月から平成29年4月までの25年間にもわたり,外科医師として勤務してきており,外科専門医等の多数の認定医・指導医の資格を有していること,相手方病院でも一貫して消化器外科,肝胆膵外科の専門医として勤務しており,専門医としての資格,経験及び実績を積み重ねてきたことが認められる。」等として、職種限定を認め、配転を認めませんでした。
この点、菅野和夫著「労働法第12版」729頁も、「医師、看護師、ボイラー技士などの特殊の技術、技能、資格を有する者については職種の限定があるのが普通であろう」として特殊っ技能者について職種の限定があるのが通常としているところです。

整備士についても特殊の技能を要する職種であると思われますので、契約書の記載内容如何に関わりなく、職種変更が認められない可能性があります(なお、職種変更に応じない場合、職種変更の打診が整理解雇の避止措置の一環とみられ、整理解雇の際に不利な立場におかれる可能性はあります)。

帝国航空としては、あくまで職種変更はお願いベースだという認識を前提に、粘り強い説得が求められるところです。

さいとうゆたか法律事務所トップはこちらです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です