個室提供でソープランド責任者ら逮捕 法的な問題は?

報道によると、ソープランドである亀有角海老の責任者らが、従業員の女性が売春することを知りながら個室を提供した疑いで逮捕されたとのことです。

売春防止法11条は、以下のとおり、売春場所を提供することを処罰していますので、同条文に基づく逮捕と思われます。

(場所の提供)
第十一条 情を知つて、売春を行う場所を提供した者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
2 売春を行う場所を提供することを業とした者は、七年以下の懲役及び三十万円以下の罰金に処する。
 さて、ソープランドはそもそもトルコ風呂呼ばれていたわけですが、トルコ風呂については、参議院地方行政委員会昭和39年2月18日の会議で、早川崇国務大臣が以下の答弁をしています。
「トルコぶろで売春行為というようなことが実際具体的に見つかりましたならば、売春禁止法、また児童福祉法、労働基準法その他の関係法令で取り締まることもできるわけでございます。一挙にこの深夜喫茶以外も含めてやるという段階ではない」
「われわれはトルコぶろを利用して売春行為をやっておればどんどん摘発できる法律的根拠も、ございます。法改正の日程には全然のぼったことはございません。」
 つまり、トルコ風呂で売春が行われてはいないという見地に立っているわけです(ちなみに、早川大臣は、「トルコぶろは、銀座裏で十年ほど前、朝、汽車で着きまして、あれは非常に便利なところですから、ふろへ入ったことがございます。」としてトルコ風呂に行ったことを認めています)。
 その後のソープランドについても政府は売春が行われているという認識は明確には示していません。
 しかし、実際そのような認識がないはずはありません。
 そうであれば、国がソープランドの営業を認めておきながら、一部店舗についてだけ売春防止法での検挙を行うことについてはモヤモヤした部分が残ります。
 この点、ソープランドへの融資が売春防止法違反に問われた事件(大阪高裁平成7年7月7日判決)において、弁護人は、「弁護人は、神戸市長や関西電力の担当者や水道局の担当者も売春防止法一一条二項違反の幇助犯となるのにそれを放置しているのは問題であり、公安委員会が営業廃止処分を行わないのは実質的に個室付浴場営業を保護している証左であ」るなどの主張を行ったところです。
 それに対し、判決は、「本件審理の対象は神戸市長等が売春防止法一一条二項違反の幇助犯となるかどうかではないうえ、弁護人の主張するところが肯定されようと否定されようと、被告人の売春防止法一三条一項違反の認定には何の関係もないのであるから、これに直接答えていないからといって、何ら問題はない。」として弁護人の主張を切り捨てています。
 しかし、政府や公安委員会等がソープランドを公認している状況で、仮に特定店舗のみ起訴するようであれば、公訴権の濫用という主張もありえないではないと考えます。
 是非とも弁護人には今回の逮捕と政府等の対応との矛盾をえぐる主張をしていただきたいと思います。

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