非接触事故の過失割合 新潟県での交通事故は弁護士齋藤裕に御相談ください

交通事故

執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)

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1 交通事故と過失割合

交通事故で被害者にも一定の落ち度等がある場合、被害者の過失割合に応じて損害額を減額します。
これを過失相殺といいます。

この過失割合については、別冊判例タイムズ「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準 全訂5版」所収の過失割合が基準とされることが多いです。
しかし、ここでは主に接触事故が念頭におかれており、非接触事故については触れられていません。

それでは非接触事故についてはどのように過失割合を考えるべきでしょうか?

2 裁判例からみる非接触事故の過失割合(車線変更)

大阪地裁平成30年11月27日判決は、車線変更による事故(四輪車同士)に関するものです。
Y車が車線変更をしてきたため、X車においてそれを避けるためにハンドルを切り、自車を縁石に衝突させたという事故態様でした。

同判決は過失相殺について以下のとおり述べます。

「被告Y1は,本件道路の第1車線から第2車線に被告車の進路を変更する際,右後方の安全確認が不十分であり,後続する原告車の進路を妨害した過失が認められる。」
「他方で,原告X1も,前方左右を注視し,ハンドルやブレーキ等を的確に操作して安全に進行する義務があるところ,前方で車線変更しようとする被告車の動静に対する注意が不十分であったといえ,また,原告車が被告車と接触してはいないことも考慮すると,本件駐車場出口付近の縁石に接触するまでの原告車のハンドル・ブレーキ等の操作が不確実であったといえるため,上記義務に違反した過失が認められる。」
「原告X1と被告Y1の過失の内容,程度を比較すると,本件事故が非接触の事故であること等の諸事情に鑑みても,車線変更により後続車の進路を妨害した被告Y1の過失の方が幾分か重いといえるため,本件事故の過失割合としては,被告Y1が6割,原告X1が4割と認めるのが相当である。」

四輪車同士の車線変更による事故については、直進車3割、進路変更車7割というのが基本的な過失割合です(別冊判例タイムズ「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準 全訂5版」291頁)。
ですから、大阪地裁は、非接触事故であることにより1割の過失割合の修正をしていると考えられます。

3 裁判例からみる非接触事故の過失割合(一時停止違反)

京都地裁平成30年10月29日判決は、自動車が一時停止違反をし、前部を交差点に少し出しており、そのために交差道路を走行してきたバイクがフルブレーキをして転倒したという事案についてのものです。

裁判所は、「原告車と被告車は何ら接触しておらず,かつ,原告の運転操作により接触を回避できたという事案でもなく,本件全証拠を精査しても,客観的な接触のおそれは肯定できない。」として、50:50の過失割合を認定しています。

自動車とバイクでは自動車の方が過失割合は大きくなります。また、交差点事故では一時停止規制のある方の過失が大きくなります。

よって、京都地裁判決は、非接触であることをかなり重視して過失割合を修正したといえます。

4 非接触事故での過失割合をどう考えるべきか

非接触事故の場合、被害者も事故を回避するための選択をする余地が接触事故の場合より大きいとはいえ、そのため被害者側の過失が大きくなる可能性はあります。

上記3,4の裁判例は、いずれも、被害者に選択の余地が相当程度あったのに、適切な判断、操作がなされなかった事例だと言えます。

ただし、非接触事故でも、被害者において非接触であることにより選択の幅が大きかったと言える場合以外には修正がなされるべきではないことは当然です。

この点、中園浩一郎裁判官「非接触事故における過失相殺」(赤本2007年版所収)は、裁判例を検討した結果、非接触事故のうち、30パーセントの事例において過失割合が修正されている、70パーセントの事例において過失割合は修正されていないとしています。

5 新潟で交通事故のご相談は弁護士齋藤裕へ

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