交通事故で亡くなった場合、受領できなくなった年金分は逸失利益となるか?

さいとうゆたか弁護士

執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)

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1 年金と逸失利益

交通事故で死亡した場合、年金が受給できなくなります。

そのため、年金分について逸失利益として損害賠償の対象となることがあります。

ただし、年金の種類によって賠償の対象とならないこともあります。

以下、解説します。

2 年金の種類と逸失利益

年金については基本的に受給権者が死亡した場合に逸失利益の賠償の対象となります。

しかし、障害年金の加給分、遺族厚生年金等の遺族年金については逸失利益の対象から除外する判例がありますので、注意が必要です。

3 受給開始前の年金と逸失利益

裁判例においては、受給開始前の年金についても逸失利益を認める事例があります。

東京高裁平成15年12月17日判決は、死亡時43歳会社員について、退職年金に関する逸失利益を認めつつ、老齢年金についての逸失利益を否定しました。老齢年金についての逸失利益が否定されたのは、それが生活費に費消されると見込まれるということです。

大阪地裁平成27年11月17日判決は、「事故当時,Aは,国民年金と厚生年金を計298か月間納付してきていることが認められるところ,同加入期間が25年(300か月)にわずかに満たないことに鑑みれば,受給開始前ではあるものの,老齢基礎年金及び老齢厚生年金について,死亡逸失利益を本件事故による損害として認めるのが相当である。」として、年金についての逸失利益の賠償を認めました。ただし、就労中と想定される67歳までの間は認めませんでした。

東京高裁の論理はややとってつけたような感じであり、実質的には被害者の年齢のために年金の逸失利益性を認めなかったものと考えられます。

大阪地裁判決等を踏まえると、年金の加入期間を満たす、あるいはもうすぐ満たすような年齢の被害者については、年金受給前においても年金の逸失利益性が認められる可能性が高いと考えます。

4 年金と生活費控除

被害者死亡で逸失利益が賠償される場合、生活費がかからなくなる分を控除することになります。これを生活費控除といいます。

年金については、それが生活の最低保証に近いものであることから、生活費控除率が高くなる傾向があり、50%というケースが多くあります。

大阪地裁令和4年4月15日判決は、医療過誤についてですが、「本件患者は、老齢厚生・基礎年金を受給し、年額10万8800円(平成29年の源泉徴収票による。)の収入を得ていたことが認められる。また、年金支給の趣旨及びその金額等を踏まえれば、生活費控除率は50%とするのが相当である。」として年金受給についての生活費控除率を50%としました。

東京地裁令和4年1月28日判決は、「亡Cの年金収入分の基礎収入としては,35万1814円とするのが相当である。また,生活費控除率は50%とし」とし、生活費控除率を50%としました。

大阪地裁令和3年9月14日判決は、「亡Aの年金額,生活状況等を踏まえれば,亡Aの年金に係る基礎収入は110万8722円,生活費控除率は50%と認めるのが相当である」とし、生活費控除率を50%としました。

大阪地裁令和3年9月9日判決は、「Aは,年金として年額179万3587円を受給していた・・・上記年金受給額に照らして,生活費控除率は,50%を認めるのが相当である。」とし、生活費控除率を50%としました。

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