BPOがスーパーJチャンネルについて放送倫理違反との意見公表

さいとうゆたか弁護士

業務用スーパー企画でヤラセ

 BPO(放送倫理・番組向上機構)は、「テレビ朝日『スーパーJチャンネル』『業務用スーパー』企画に関する意見」を公表しました。

 これは、テレビ朝日の報道番組であるスーパーJチャンネルにおいて、2019年3月15日に放映された業務用スーパーに関する特集でヤラセがあったという事実を踏まえたものです。
 この特集に出ていた「客」は、実はディレクターが塾長を務める演技塾の生徒であり、ディレクターからロケの日時・場所を聞かされ、出向き、そこで初めてディレクターに会ったかのように装い、取材を受けたとのことです。

 BPOは、このような事実関係を踏まえ、「主要なエピソードを構成する登場人物のすべてが、Xディレクターの生徒や知人だった上、本件特集のロケがあることを事前に知って舞台となったスーパーに来店していたのであり、いずれも偶然に出会った利用客ではなかった。この点だけをもってしても、本件特集は、その取材の過程が適正とは言い難く、内容においても、本来ならその場に現れるはずのない『客』を偶然に装って登場させたという点で正確ではなく、公正さを欠いていた」、「したがって、委員会は、本件特集には放送倫理違反があると判断する」として、番組が放送倫理違反に該当すると判断しています。

 ここでは、民放連とNHKが1996年に定めた放送倫理基本綱領の「報道は、事実を客観的かつ正確、公平に伝え、真実に迫るために最善の努力を傾けなければならない」、「取材・制作の過程を適正に保つことにつとめる」との規定、民放連の放送基準の前文の「正確で迅速な報道」、同32条の「事実に基づいて報道し、公正でなければならない」との規定に違反していることが問題とされています。

 指摘された事実関係からすると、当然過ぎる結論と思われます。

 民放には憲法21条により報道の自由が保障されています。
 ですから、名誉棄損やプライバシー等、人の権利を侵害等する場合を除き、報道内容について法的な規制を受けることは通常はありません。
 これは日本が民主主義・自由主義の国家であるための基本的な条件と言えるでしょう。
 しかし、そのことは民放が野放図な報道をしてもいいということではありません。
 民放がいい加減な報道をし続けるとすれば、規制強化の議論は必ず出てきます。
 テレビ朝日は、自らが享受する報道の自由の重要性に思いを致し、それを維持するためにも、BPOの意見書を踏まえ、改めて再発防止に力を入れるべきでしょう。

さいとうゆたか法律事務所トップはこちらです。

 
 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です