
被害総額2000億円の詐欺の疑い
ジャパンライフ元会長の山口隆祥容疑者が逮捕されたとのことです。
実際に同容疑者が詐欺に関与していたかどうかは今後の公判等で明らかになることですが、仮に2000億円もの詐欺が認められた場合、どの程度の量刑となるでしょうか?
巨額詐欺事件での量刑
財産犯においては被害額で量刑が大きく左右されます。
被害者総数三五名、被害総額六億六五五四万円余りのオレンジ共済事件で、東京地裁平成14年2月25日判決は、被告人を懲役8年に処しています。
5億円余のビール券をだまし取った事案についての長野地裁令和2年3月16日判決では、被告人を懲役7年に処しています。
これに対し、被害総額が数十億円を超えてくると10年を超える懲役刑の事例が多くなってきます。
京都地裁平成30年4月26日判決は、45億5000万円が被害額となる電子計算機使用詐欺等の事件について被告人を懲役14年に処しています。
大阪地裁平成1年3月29日判決は、豊田商事によるファミリー商法について、被害総額137億円余にのぼる詐欺事件だとして、取締役らを懲役10年から13年に処しています。
投資顧問の代表者や取締役らが、年金基金の担当者らに対しファンドの虚偽の運用実績を示して購入させ、よって年金基金から約248億円をだましとったという詐欺罪について、東京地裁平成25年12月18日判決は、代表者を懲役15年、取締役を7から8年に処しています。
これらからして、仮に山口隆祥容疑者が数十億円レベルの詐欺容疑で有罪判決を受けた場合、代表者であったことからして、懲役10年を超える判決も大いにありうるところです。
なお、東京地裁判決は、代表者の量刑について、
・代表者がワンマンで詐欺事件の首謀者であったこと
・自らの利益を図る動機が認められること
・個人資産を被害回復にあてない意向を有していること
・公判でだまし取るつもりがなかったと供述しており、反省の念が乏しいこと
・正式裁判を受けるのは初めてであること
を考慮しています。
ですから、ジャパンライフについても、山口隆祥容疑者が首謀者と言えるか、動機は何か、どの程度弁償がなされるのか、反省の念等が量刑を左右する事情となるでしょう(なお、山口隆祥容疑者については高齢であることが有利な情状となる可能性はあります)。
適正な捜査ないし審理に基づく公平な処分がなされることを期待します。
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