読売旅行のツアー12人がコロナ感染 法的責任は?

さいとうゆたか弁護士

1 不調の申告見逃すとの報道

報道によると、読売旅行のツアーで12人がコロナウイルスに感染したとのことです。
このツアーでは、添乗員が参加者による不調の申告を見逃していたとのことです。
当初から不調だった参加者は別として、ツアーに参加することで感染した方は読売旅行に賠償請求ができるでしょうか?

2 不法行為・債務不履行の要件

損害賠償が認められるためには、故意・過失あるいは義務違反が認められる必要があります。

この点、読売旅行は、そのサイトで、「安全・安心の旅をお届けする当社国内ツア-のお約束」の一つとして、「ご旅行当日、添乗員がチェックシートを回収させていただき、健康状態に問題がある場合はご参加をお断りさせていただくことがございます。旅行開始後でも同様の対応を取らせていただくことがございます。」としています。

ここでは、健康状態に問題がある場合には、「ご参加をお断りさせていただくことがございます」と、健康状態に問題がある参加者もそのままツアーに参加させうるかの記載もあります。
しかし、体調不良といっても新型コロナウイルス感染症とは結び付かないようなものもあるので、このような書き方をしていると考えられます。
新型コロナウイルス感染症が社会問題となり、ほとんどの人が感染しないことを重視している状況において、上記記載があることで、ツアー参加者は、読売旅行において、新型コロナウイルスの症状がある人はツアーに参加させないという対応をとっているという期待を持つでしょうし、そのような期待は合理的と思われます。

よって、読売旅行において、仮に新型コロナウイルス感染症の徴候とされる症状を見逃し、ツアー参加をさせていたとすると、不法行為あるいは債務不履行による損害賠償責任を負う可能性があります。

3 因果関係について

そうはいっても、他で新型コロナウイルスに感染した可能性の高いツアー参加者に対する賠償責任は負わないでしょう。
参加者の居住地や交通手段、従来の症状の有無等から、ツアーにより新型コロナウイルスに感染したと強く推認される参加者についてのみ賠償責任が生ずると思われます。
その場合には入院・通院日数に応じた慰謝料、休業損害等が賠償の対象となりえます。

4 最後に

今回の事件は旅行業者の新型コロナウイルス対策に対する信頼を損ねる重大な事案です。
読売旅行には早急な事案解明と改善策の提示を期待します。

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