脊柱管狭窄症と素因減額(交通事故)

交通事故

1 交通事故と素因減額

交通事故で被害者が傷害を負った場合であっても、もともとの素因が傷害の発生や拡大に寄与しているような場合、素因減額として損害賠償額が減額されることがあります。

その中でもよく見かけるのが脊柱管狭窄症が元々あった場合です。

 

2 脊柱管狭窄症で素因減額を認める裁判例

例えば、水戸地裁平成30年5月23日判決は、以下の事情のもとで、50パーセントの素因減額を認めました。

・後遺障害は,本件事故の態様に比して結果が重大である

・本件事故の前から脊柱管の高度かつ広範な狭窄等があった

大阪地裁令和3年11月26日判決は、以下の事情のもとで、20%の素因減額を認めました。

・後縦靭帯骨化による脊柱管狭窄の程度(脊柱管前後径)は,CT画像(矢断面)上の測定によりC4高位で7.7mm,C5高位で8.5mmであることが認められ,一般的に脊柱管狭窄症と評価される値(12~13mm)より相当に狭窄が進行していて年齢相応のものということはできない。

大阪地裁平成31年1月30日判決は、事故衝撃が相当程度強いものであったことを理由として、素因減額を10パーセントにとどけました。

このように、

・事故態様との関係で現実に生じた傷害が不釣り合いに重いものかどうか

・事故前にあった障害と事故で生じた障害は重なるものか

・事故前の障害は事故時において軽快していたかどうか

等の要素を考慮し、素因減額をするかどうか、するとしてどの程度減額するかが決定されることになります。

3 脊柱管狭窄症で素因減額を認めない裁判例

他方、脊柱管狭窄症は加齢に伴い出現するものであり、特異なものではないなどの理由で、素因減額を否定する裁判例も多くあります。

大阪地裁令和1年11月15日判決は、

・被害者が事故前に脊柱管狭窄症での治療を受けていたわけではないこと

・事故による後遺障害がないこと

などを理由に素因減額を認めませんでした。

東京地裁令和2年9月23日判決も、

・原告は本件事故以前に頸部の痛みを訴えて通院した事実はうかがわれないこと

・本件事故が追突事故であり,原告車両の車体後部の凹損を要するものであって軽微な損傷ではなく,一定期間の治療を要することがあり得るものであること

から素因減額を否定しました。

素因減額を認めない判断の要素は、3で述べた要素に裏返しとなります。

4 脊柱管狭窄症による素因減額が認められる損害費目

なお、福岡地裁判決では、「被告は,治療費,通院交通費及び通院慰謝料についても素因減額がなされるべきであると主張するが,症状固定時期について前記のとおり本件事故と相当因果関係がある範囲内に限定して認めていることからすると,その期間が素因減額をしなければ公平を失するというほど長期間に過ぎるとはいえないのであるから,被告の主張は採用できない。」として、通院関連損害について素因減額を認めていません。

大阪地裁令和3年3月24日判決も、「必要かつ相当な治療期間の判断において,既に経年性の変性があったために治療が遷延化したことを踏まえ,必要かつ相当な治療期間を3か月程度と限定しているので,素因減額をする必要性がない。」として、素因が相当な治療期間の判断において考慮されていることから、さらに素因減額はしないとしています。

通院関連損害が事故の態様との関係でかなり高額となるような場合においては通院関連損害についても素因減額がなされることはありますが、素因減額は常にすべての損害項目について一律になされるものではありません。

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