人感センサー使い軟禁状態 法的責任は?

さいとうゆたか弁護士

報道によると、従業員に休日なしで107日間続けて強制労働させたとして、岡山県の不動産管理会社社長が逮捕されたとのことです。

今回、労働基準法5条違反が問題となっています。

労働基準法5条は以下のとおり定めます。

(強制労働の禁止)
第五条 使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によつて、労働者の意思に反して労働を強制してはならない。
労働基準法5条に違反し、強制労働をさせた場合、一年以上十年以下の懲役又は二十万円以上三百万円以下の罰金に処せられる可能性があります。
近年よく見かけるものではありませんが、強制労働の裁判例もあります。
例えば、カフェ女王蜂事件(山口地裁昭和40年12月14日判決)は、以下のとおり、強制労働罪の成立を認め、懲役1年執行猶予2年に処しています。
「被告人は、昭和三五年四月ころから防府市栄町七丁目においてカフエー「ハリウツド」を経営するかたわら、同三七年八月ころから同市新天地においてカフエー「女王蜂」を経営していたものであるが、同三七年四月七日午前零時過ぎころ、右カフエー「ハリウツド」店内において、当時同店の女給であつたAが離職したい意思を有することを察知するや、後記手段により同女に精神的拘束を加えてその離職を阻止するとともに引きつづき就労させようと考え、同女の前借金三六、四一〇円の外、「客責任」と称する顧客に対する売掛未収金の集金責任額九五〇、〇四〇円、合計九八六、四五〇円につき、被告人の実妹大空恵美子をして右額を記載した書面を作成させたうえ、右A(当二〇年)に対し、署名および拇印の押捺を強要し、被告人が同店に出入りする暴力団田中会の会員と親密な関係があるように装いかつ右田中会の会員に売掛未収金の取立を委ねていたところから、かねて被告人を畏怖していた同女をして、前記書面に署名および拇印の押捺をさせて前記金額の借用証を作成させてその離職を阻止するとともに、引きつづき同三八年二月ころ同女が逃亡するに至るまで同女をして同店および前記カフエー「女王蜂」において就労させ、もつて同女の精神の自由を不当に拘束する手段によつて同女の意思に反して労働を強制したものである。」
このように、前借金の借用証に署名等させる方法により労働させる場合も強制労働に該当するとされています。
また、旭川地裁昭和28年3月2日判決は、働きが悪いと2から3時間の説教をする、作業現場に監視者をつける等の事情のもとで1日14時間にわたる炭坑労働をさせたケースにおいて強制労働罪の成立を認め、被告人を懲役2年等の刑に処しています。
暴行と人感センサーの組み合わせで労働させることは、後者の裁判例における監視者を電子化したようなものであり、暴行と人感センサーの組み合わせで長時間労働させることは強制労働罪に該当しうると言えるでしょう。
強制労働罪での立件は頻繁に見かけるものではありませんが、現在でも強制労働と評価されるような環境で労働を強いられている方はいらっしゃると思います。
そのような方はお気軽にご相談ください。

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