
1 看護師の過労自殺
看護師をはじめとする医療職は過労死が多い職業です。
長時間労働もさることながら、患者とのトラブルなど業務内容もストレス要因となっている可能性があるでしょう。
札幌地裁令和2年10月14日判決は、看護師の過労死について、労基署が労災として認定しなかったものについて、患者とのトラブルがあったこと等も踏まえ、労災認定をしました。
看護師の過労死を考える上で参考になる裁判例と思われるので、ご紹介します。
2 札幌地裁判決
札幌地裁判決は、以下のとおりの判断を行い、結果的に被災労働者が適応障害に罹患し、自殺したことは労災に該当するとしました。
・提出物が遅れることで上司から叱責されることがあった。これは「上司とのトラブル」に該当する。不合理な指導とも言えず、心理的負荷は「弱」
・報連相や採決や注射、患者とのコミュニケーションについて新人看護師として身につけるべきものであった、しかしながら3か月の試用期間中には求められる水準には達しなかった、それを延長された1か月の試用期間内に達成するよう求められていた。これは「達成困難なノルマが課せられた」と評価できる。試用期間の延長等は、「非正規社員である自分の期間満了が迫ったと」いう事態に該当する。以上の心理的負荷は「中」
・患者からのクレームが複数あった。そのことは、「顧客や取引先からクレームを受けた」という事態に該当する。「苦情の内容は、看護業務を遂行に当たって非常に重要な患者への説明内容や患者との信頼関係に関するもので、その数も少なくなかった」等の事情があり、心理的負荷の程度は「中」
以上の事情を踏まえ、心理的負荷の程度は、同種の労働者にとって精神障害を発病させる程度に強度のものであったと認めるのが相当であるとされました。
同判決においては労働時間はほぼ検討されておらず、それ以外の要因による負荷の大きさで判断がなされているのが特徴的です。
本件は試用期間が延長された、上司から叱責された等、どの職種にも共通するような事情をとらえて労災認定をしており、そのような意味で全職種の過労死において参考となるものです。
さらに、患者とのトラブルという、看護師、ひいては医療職に特有な事情が心理的負荷「中」となる条件等について検討しており、この意味でも重要な意義を有すると思われます。
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当職が担当したANAクラウンプラザホテル新潟過労労災事件についての記事
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