新型コロナ感染者が入浴施設に入ると偽計業務妨害となるのか?

さいとうゆたか弁護士

報道によると、新型コロナウイルスに感染している人が感染者であることを隠して入浴施設を利用したとして偽計業務妨害と建造物侵入罪で逮捕されたとのことです。

感染者であることを隠してこれらの犯罪で逮捕されることに違和感を感じた方も多いと思いますので、以下、解説します。

1 新型コロナウイルスに感染していることを隠して入浴することと偽計業務妨害

刑法233条は以下のとおり定めます。

「虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。」

ここで偽計とは、他人の錯誤や不知を利用し、または欺罔の手段を使うことです。

新型コロナウイルスに感染していることを知っていれば浴場側はその人を浴場に入れなかったと思われます。よって、新型コロナウイルス感染者が、感染のことを知りつつ、浴場側の不知を利用し、浴場に入ったと言えれば偽計があったと言える可能性があります。

業務妨害については、実際に業務の妨害の結果が生じなくても、妨害のおそれのある行為がなされれば足りると考えられています。

新型コロナウイルス感染者が入浴すれば消毒などのため手間や費用がかかり、来客にも影響する可能性があります。

よって、業務の妨害のおそれもあると言えるでしょう。

以上から、新型コロナウイルス感染者が、そのことを知りつつ、黙って入浴施設に入った場合、偽計業務妨害罪が成立する可能性があります。

2 新型コロナウイルスに感染していることを隠して入浴施設に入る行為と建造物侵入罪

刑法130条は以下のとおり規定します。

「正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。」

 

どのような場合に侵入と言えるかについて、最高裁昭和58年4月8日判決は、「管理権者が予め立入り拒否の意思を積極的に明示していない場合であつても、該建造物の性質、使用目的、管理状況、管理権者の態度、立入りの目的などからみて、現に行われた立入り行為を管理権者が容認していないと合理的に判断されるときは、他に犯罪の成立を阻却すべき事情が認められない以上、同条の罪の成立を免れないというべきである。」としています。

ですから、入浴施設側において新型コロナウイルス感染者や関連する症状がある人の立ち入りを明示的に禁止していたような場合においては建造物侵入罪が成立する可能性があります。

3 まとめ

以上のとおり、新型コロナウイルス感染者が入浴施設に入ったことは偽計業務妨害罪や建造物侵入罪に該当する可能性があります。

感染された方は、入浴施設等への出入りが感染を広げる原因となりうるだけではなく、犯罪とされる可能性にも留意された方がいいでしょう。

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