福岡県管理の新型コロナ患者の住所・氏名流出の法的責任

さいとうゆたか弁護士

報道によると、福岡県が管理していたコロナ陽性者の氏名・住所等の個人情報が1か月あまり第三者から閲覧できる状態とされていたとのことです。

自治体としては、病歴等の個人情報を、合理的理由なく外部に漏出させない義務を負っているものです。

佐賀地裁平成31年4月26日判決も、「個人の健康状態,心身の状況,病歴等に関する情報は,通常は他人に知られたくない情報である。したがって,本人の同意を得ることなく,これをみだりに公表することは許されない。」としているところです。

今回の件については、外部の人において、福岡県に対し、ホームページ上で患者情報を閲覧可能であることを伝えていたものであり、それにも関わらず1か月あまり閲覧可能な状態が続いたということのようです。

そうであれば、福岡県としては、そのままであれば病歴という重大な個人情報が漏洩することについて予見可能でしたし、また、容易に漏洩防止をなしえたのですから、対象となった患者に対し賠償義務を負う可能性があると言えるでしょう。

この点、上記佐賀地裁判決は、「原告の病気休暇が公表されたものの,病気の詳細は明らかにされていない。本件□□だよりの配布先は当時の生徒であり,本件□□だよりがウェブサイトに掲載されたのは,5か月弱(平成24年8月30日~平成25年1月22日頃)である。学校のウェブサイトを閲覧する者の多くは,生徒,保護者,教職員などの学校関係者であるのが通常である。これらの事情を踏まえると,本件掲載等により原告が被った精神的苦痛に対する慰謝料は,10万円と認める。」として、10万円の慰謝料を認めています。

 これは病気休暇を取ったことを学校だよりやウェブ等に掲載したことが問題とされた事例についての判決ですが、
・病気の詳細が明らかにされていないこと
・ウェブ掲載が5か月弱であること
等との事情がありました。

 これに対し、福岡県の事例では、
・病気の内容が明らかになっている
・漏洩につながる状態は1月以上であり、一般人から容易にアクセスできるようなページではなかったように思われる
との点が異なっています。

 それでも差別の対象となるような個人情報を、重過失で漏洩させたと言える可能性があり、10万円近い慰謝料が認められる可能性があると考えます。

福岡県としては早急に実態調査と再発防止策の策定、適切な補償を行うべきでしょう。
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