肝生検による事故と医療過誤

さいとうゆたか弁護士

1 肝生検について

肝生検は、生検針で肝臓の組織を採取し、検査をするものです。
比較的安全な検査とされてはいますが、重大な事故例もあり、損害賠償が認容されているものもあります。
以下、主要な事例をご紹介します。

2 そもそも肝生検すべきではなかったとされた事例

東京地裁平成22年1月22日判決は、そもそも肝生検をすべきではなかったのに肝生検を行い、その結果出血により患者が死亡したとして、賠償責任を認めています。

同判決は、患者について、肝臓内に血種があることが疑われる状態だったとしました。15
また、患者については、DICの疑いがあり、オルガラン(血液凝固阻止剤)が継続的に投与されていました。
このような状態において肝穿刺を実施した場合、腹腔内出血等の合併症が生じうるので、肝穿刺をすべきではなかったのに実施したことには過失があるとしました。

肝生検により顕著な危険性が予見される場合の肝生検については、それ自体注意義務違反と評価される可能性があります。

3 誤穿刺について注意義務違反を認めた事例

東京地裁令和2年1月23日判決は、肝穿刺をしようとして誤って肺穿刺をした誤穿刺により患者に重篤な後遺障害が残った事例について、医師の注意義務違反を認めました。

同判決は、「医師は,本件肝生検におけるエコー画像では,原告の肝臓その他の臓器を十分に描出,確認できる状態ではなかったにもかかわらず,穿刺を繰り返したものと認められる。」とし、「医師による本件肝生検には,原告Aの肝臓の位置が適切に確認できないにもかかわらず強行した注意義務違反」があるとしました。

肝臓の位置を把握できない状況での肝生検については注意義務違反と評価される可能性があります。

なお、東京地裁平成15年3月19日判決は、「肝生検を施行する際,超音波検査において,肋間動脈分枝を視認することはできず,他にも肋間動脈分枝の走行場所を確認する方法は存しない。専門医でも,肋間動脈分枝の走行場所を全て認識又は予測して穿刺することは不可能である。したがって,肝生検を施行する際,専門医が通常の手法にのっとって穿刺しても,肋間動脈分枝を損傷することはあり得る。」として、肝生検の際に誤って肋間動脈分枝を傷つけたことは過失ではないとしています。
肝生検当時の医療水準に照らし、必要性の高い肝生検を行うに際し、回避不可能な誤穿刺については注意義務違反が認められない可能性があります。

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