執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)
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足場での事故は比較的件数の多い事故です。
以下、足場での事故と安全配慮義務違反について解説します。
1 足場からの転落と安全配慮義務違反
足場での労災事故の圧倒的多くは転落事故です。
転落事故については、足場の状況に応じて、安全帯の装着義務、道板の強度確保義務、手すり・筋交い・幅木・さんの設置義務が問題となります。
広島地裁呉支部平成30年9月28日判決は、足場からの転落事故について、以下のとおり、安全帯の装着を十分指導しなかった点について安全配慮義務違反を認めています。
「高所作業において最も懸念されるのは,いうまでもなく転落事故であり,被告Y2は,転落事故防止のために必要な対策を取るべき義務を負っていたと解されるところ,転落事故防止のために最も有効な対策は安全帯の正しい使用であり(当時,原告自身も安全帯を装着していた。),被告Y2は,安全帯の確実な使用について自ら原告に対して指導するとともに,その作業状況や安全帯の使用状況を監督すべき具体的義務を負っていたものというべきである。」
福岡地裁平成26年12月25日判決は、道板が割れたことによる事故について、「原告の具体的な従事業務を把握した上,本件道板が原告の体重に耐え得るものか予め確認し,安全でない道板を撤去し,又はより頑健かつ安全なものと交換する等の義務」の違反があるとしています。
2 足場の崩落と安全配慮義務違反
労働安全衛生規則567条1項は、足場における作業を開始する前に、設備の取り外しや脱落の有無について点検し、異常があったときは補修しなければならないと定めています。
労働安全衛生規則567条2項は、強風、大雨、大雪、中震以上の地震、足場組立、一部解体、変更の後において足場での作業を行うについて、転落防止に関わるものだけでなく、崩落防止につながる箇所の点検をしなければならないと規定しています。
ですから、上記の状況、あるいは足場の安全性に影響するような事象が生じた場合において、足場のチェックをせず、その結果崩落が生じた場合、安全配慮義務違反とされる可能性があります。
なお、ここで、
・強風とは、10分間の平均風速が毎秒10メートル以上の風
・大雨とは、1回の降雨量が50ミリメートル以上の降雨
・大雪とは、1回の降雪量が25センチメートル以上の降雪
・中震以上の地震とは、震度階級4以上の地震
を指します。
同条3項は点検の記録の作成・保存を義務付けています。
なお、吊り足場については、労働安全衛生規則568条において、その日の作業を開始する前に足場のチェックをする義務が規定されています。
ですから、日々のチェック、あるいは災害後のチェックをせず、その結果足場が墜落等した場合には安全配慮義務違反の問題が生じます。
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弁護士齋藤裕は、20年以上じん肺や新潟市民病院医師過労死事件など労災の裁判に関わってきました。
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