執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)
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高次脳機能障害について、子どもに特有の問題もあり、一般の場合とは異なる考慮が必要となる場合があります。
以下、簡単にご紹介します。
1 子どもの高次脳機能障害の認定
子どもの高次脳機能障害について、MRI上以下の所見が見られるとされるので、注意が必要です。
- 深部白質や脳幹損傷所見
- 前頭葉損傷所見
- 小脳の萎縮所見
また、画像上の脳室拡大の所見が高次脳機能障害認定において重視されます。しかし、若年者については、脳室拡大して中高年の正常脳室レベルにとどまることが多いとされます。そのため、外傷当日の画像と慢性期の画像を比較することが重要となります。
2 子どもの高次脳機能障害の症状固定
千葉県立千葉リハビリテーションセンターサイトは、子どもの高次脳機能障害について以下のとおり述べます。参照:子どもの高次脳機能障害についての説明
「日常生活で困る症状に対して、環境との関わり方を変え、適切な行動を可能にする代償スキルを獲得できれば、高次脳機能障害はよくなったということになります。代償スキルを獲得するには、まず自己の機能に関して現実的に受け入れ、健全に残っている能力を自覚し日常生活をこなす能力につなげることができればよいのですが、中学生あるいは高校生位にならないと難しい面もあります。」
日本小児神経学会サイトも、子どもの高次脳機能障害について以下のとおり述べます。
「特に子どもでは長期にわたり改善していくことが多いです。脳に回復していく力(可塑性・かそせい)があるためと、子ども本来がもつ発達があるためです。そのため症状が時間とともに変化していく特徴があります。」
このように、子どもの高次脳機能障害については、症状改善の経過に特徴があり、症状固定判断が困難となると思われます。
この点、子どもの高次脳機能障害の症状固定時について争われた、さいたま地裁令和1年12月24日判決では、小児の高次脳機能障害の症状固定の判断困難であるとの認識を前提に、「明らかに誤りがあるなど特に問題がある場合でない限りは,直接治療に当たった医師の判断が尊重されてしかるべきであるといえる。」としています。
そして、当該事案では、「本件では,B病院の担当医師は,原告X1の初回の入院での約2か月間の診察,リハビリをみており,退院後は自宅や学校での生活状況を確認しながら,原告X1の診察を続け,その上で,受傷後1年8か月以上経過し,家庭や学校の適応の様子も把握し,症状固定と判断したのであり,そのことに特に問題はみられない。」としているところです。
このように、子どもの高次脳機能障害事案では、症状固定について争いが生じうることに注意が必要です。
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