転職会議等転職サイトへの書き込みと名誉棄損

さいとうゆたか弁護士

1 名誉棄損と発信者情報開示、削除、慰謝料請求

インターネット上のサイトに、人の社会的評価を低下させる書き込みがなされた場合、名誉棄損として慰謝料の対象となることがありえます。削除請求もありえます。

匿名の人が書きこんだ場合、発信者情報開示請求をして誰が書きこんだか明らかにできる場合もあります。

この発信者情報開示請求については、請求者は、社会的評価が棄損されたことだけではなく、書き込みに違法性があること、つまり、

ⅰ 公益目的がないこと

ⅱ 公共の利害に関する事柄以外の書き込みであること

ⅲ 真実でなく、かつ、真実と信じるについて相当な理由もないこと

のいずれかを明らかにする必要があるとされています。

このことは転職会議等の転職サイトでも同じですが、転職サイトには特殊な面もあります。

以下、解説します。

2 転職サイトと発信者情報削除

東京高裁令和2年11月11日判決は、転職サイトへの書き込みにかかる発信者情報開示請求について以下のとおり述べます。

転職総合サイトの役割の一つは,転職を考えている者に見込み転職先企業についての種々の情報を提供し,その希望に沿った転職を可能ならしめることにある。本件各記事は,転職先企業の1つである控訴人に,理不尽な社風や,上司に意見が言えない雰囲気や,休日出勤の慣行などがあることを指摘するものであり,これらの事実は,転職を考える際において重要な要素というべき事柄である。これらの事実についての情報を提供することは,実際の事実・経験に即した情報であれば,それが控訴人の悪い評判,不満・批判を内容とするものであっても,転職希望者の転職先選択の参考になるものであるから,本件各記事は公共の利害に関する事実に係り,専ら公益を図る目的でされたものと認めることができる。

このように、転職サイトへの書き込みについて、書き込み対象社の評価につながる記載については、公共の利害に関する事実に係るものであり、公益目的で記載されたものだと判断されています。

もちろん、書き込みの内容によっては、公益目的が否定されることもあるでしょうが、転職サイトに書きこみ対象社の評価につながる記載をした場合、公共利害性や公益目的性が容易に認定されがちだとは言えるでしょう。

なお、同判決は、真実性について、書きこんだ者から書きこんだ内容を裏付ける一応の回答書が出ているものの、「上記回答書に応じて事実の不存在まで厳密な立証を求めると,本来,被害者と発信者との間で争われるべき事項について,発信者からの日時,場所等の特定がなく,抽象的な事実に止まる,中途半端な上記回答書に対して,およそそのような事実はないという不可能に近い立証を強いることになり,相当でないからである。」として、真実性が認められず、発信者情報開示請求は認められるべきとしています。

公共利害関連性および公益目的性が容易に認められ、さらに抽象的な回答書だけで真実性が認められるとなると、書き込みの被害者は救われないことになります。

ですから、特に転職サイトにおいては、抽象的な回答書だけで真実性は認められないという姿勢は妥当と考えます。

3 転職会議と削除請求

代表的な転職サイトである転職会議についてはサイトからの削除請求ができます。

しかし、この削除請求については、真実性がないこと等について、資料を添え、十分な説明をしないと削除されない場合もあります。

弁護士に削除依頼をした方がよい場合も多いでしょう。

4 新潟で転職会議等転職サイトでの書き込みについてのお悩みは弁護士齋藤裕(新潟県弁護士会所属)にご相談ください

まずはお電話(025-211-4854)か、メールでご連絡ください。

弁護士費用はこちらの記事

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