懲戒免職・懲戒解雇と退職金

労災、解雇問題

1 懲戒免職・懲戒解雇と退職金

懲戒免職・懲戒解雇がなされた場合、同時に退職金も不支給となることが多くあります。

しかし、退職金は賃金の後払い的性質を有するものです。

ですから、懲戒免職・懲戒解雇がなされても、必ずしも退職金請求権が失われるものではありません。

懲戒免職・懲戒解雇がなされたものの、退職金不支給は許されないとした裁判例も多くあります。

以下、裁判例をご紹介します。

2 懲戒免職・懲戒解雇と退職金に関する裁判例

福岡高裁令和3年10月15日判決

福岡高裁令和3年10月15日判決は、酒気帯び運転事案について、退職手当の全部不支給を違法としました。

その理由としては、

・約34年間、懲戒処分を受けることなく、自治体職員として勤務を続けてきたこと

・勤務状態に問題はなく、むしろ良好であったこと

・酒気帯び運転をした距離が715・8メートルと比較的短距離であったことt

・事故を発生させていないこと

・不起訴となっていること

・非違行為の当日に職場に連絡するなど、報告を怠らなかったこと

・反省の意を示していること

・本人が57歳であり、再就職が困難であり、退職金全部不支給は酷であること

というものがあげられています。

札幌地裁令和1年11月12日判決

札幌地裁令和1年11月12日判決は、横領事案について、退職手当返納命令に違法はないとしています。

その理由としては、

ⅰ 高校の事務長という教育機関の重職に就き,校長等からの信頼を受けて会計事務を担当していたにもかかわらず,その職責に背き,約2年もの長きにわたり,悪質かつずさんな事務処理を常習的に続けていたこと

・本件高校の私費会計に混乱を与え,金銭的損害までも生じさせた

・原告の非違行為が発覚した経緯を見ても,後任の事務長が不審点に気付いて調査が行われたところ,これが発覚したというものであって,原告が自主的に自らの非違行為を申告したというものではないこと。発覚後,原告は,本件高校による調査や本件事情聴取において,基本的な事実関係はおおむね争わなかったものの,使途等に関する説明を二転三転させ,あるいは不自然かつ不合理な説明を展開するなどしているのであって,自らの非違行為の重大性に対する自覚が乏しいといわざるを得ないこと

・本件処分当時,原告が,本件手当の全額の返納を命じられたとしても,原告の生活が著しく困窮するような状況にあったとは認められないし,返納が困難であったというべき事情があったとも認められないこと。そして,現に原告は本件処分で命じられた全額を返納しているのであって,これにより生計が維持できなくなったとも認められないこと

・原告が被告の職員として35年間勤務し,その間本件懲戒処分を除いて懲戒処分を受けたことはないこと,

といった事情があげられています。

東京高裁平成31年2月27日判決

東京高裁平成31年2月27日判決は、市立中学の校長が同校の教員に抱きつき,複数回キスをし,胸を触るなどのわいせつな行為を、懲戒免職された事案について、「教員として採用されてから本件各処分までの約36年間,非違行為による処分を受けたことがないこと,第1審原告の退職手当等は2228万9628円であり,その全部が支給されない場合には,第1審原告の退職後の生活設計に少なからぬ影響が生じる」ことを踏まえつつ、以下の事情から退職金不支給を適法としました。

・本件中学校の校長としてセクハラ行為等の予防のために他の教職員の教育,研修,指導に率先して取り組み,職場環境を整えるべき立場にあったこと

・それにもかかわらず同じ中学校に勤務する女性教員に対しわいせつ行為に及んだこと

懲戒免職・懲戒解雇と退職金についての裁判例のまとめ

このように、

ⅰ 対象行為の悪質性、期間、

ⅱ 職責の重さ

ⅲ 非違行為の重さ、損害の大きさ

ⅳ 非違行為発覚の経緯など、反省の情

ⅴ 退職金の支給が認められないことでの職員のダメージの大きさ

ⅵ 勤続年数

ⅶ 懲戒処分歴

などを踏まえ、退職金の支給の是非が判断されます。

かならずも懲戒解雇や懲戒免職になったというだけで直ちに退職金不支給とはなりません。

ですから、懲戒解雇や懲戒免職を受け、退職金が不支給だと言われた方は、まずは弁護士にご相談ください。

3 新潟で労働事件については弁護士齋藤裕(新潟県弁護士会所属)にお気軽にご相談ください

労働時間一般についての記事もご参照ください。
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