執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)
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1 弁護士費用特約と労災
弁護士費用特約は、弁護士費用について心配することなく安心して弁護士に依頼ができる優れた制度です。
しかし、労災の場合、人身被害の賠償のためには弁護士費用を拠出できないとされていることがあり、争いになることがあります。
以下、解説します。
2 弁護士費用特約にいう「労働災害」とは?
労働災害は、業務に起因する業務災害と、通勤に起因する通勤災害に分けられます。
少なくない方が業務災害を念頭に労働災害をとらえているかもしれません。
この点、東京高裁令和2年9月30日判決は、「本件免責条項の定める「労働災害」とは,労災保険法7条1項各号所定の災害をいうものであり,通勤災害も含むものであると解するのが相当である」として、通勤災害も労働災害に含まれ、弁護士費用特約が適用されないとしています。
「労働災害」との言葉については、他法令等において業務災害に限定している例もあるようであり、東京高裁の判決が必ずしも説得力を持つとは言えません。
しかし、通勤災害の場合については弁護士費用特約が使えない可能性は頭の片隅に置いておくべきでしょう。
3 保険会社が弁護士費用を払わなかったらどうする?SBI損保には要注意
労働災害関連以外でも弁護士費用の払い渋りはよくあります。
特にSBI損保等に顕著ですが、同社には限られません。
払い渋りがあった場合、契約者から保険金の支払いを請求することになります。
ここで問題となるのが、弁護士に弁護士費用を払ってからでないと保険金請求をなしえないかどうかです。
例えば、東京高裁平成29年4月27日判決は、当該約款に基づき、弁護士費用支払後でないと保険金の請求をなし得ないとしています。
通常、弁護士費用特約においては、保険会社から弁護士に直接弁護士費用が支払われ、契約者が一旦支払うということはありません。
それが保険会社の不払いがあると一旦弁護士費用を支払った上で、訴訟などをしなくてはならいので大変です。
SBI損保等、弁護士費用特約の支払について評判の悪い保険会社とは契約しない、していたら切り替えるということが重要です。
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