デジタル社会形成整備法に伴う個人情報保護法「改正」で個人情報保護条例はどうなる? その3 審査会・審議会

さいとうゆたか弁護士

1 個人情報保護法「改正」と審議会

「改正」後の個人情報保護法は、以下の規定を置いています。

(地方公共団体に置く審議会等への諮問)
第百二十九条 地方公共団体の機関は、条例で定めるところにより、第三章第三節の施策を講ずる場合その他の場合において、個人情報の適正な取扱いを確保するため専門的な知
見に基づく意見を聴くことが特に必要であると認めるときは、審議会その他の合議制の機関に諮問することができる。

この規定により、審議会等への諮問は「特に必要であると認めるとき」に限られるようになるのでしょうか?

2 個人情報保護法「改正」で審議会についての規定が設けられた立法趣旨

この点、同規定の趣旨について、以下のような国会答弁がなされています。

 

〇令和3年5月11日 参議院内閣委員会 政府参考人

「個別の個人情報の取扱いの判断につきましては、国が策定するガイドラインも作られますし、個人情報保護委員会の先ほどもお話がございました助言等もございますので、そういったものを参照することで解決する場合、あるいは不明確な部分がクリアになっていくことが多いと考えられます。したがいまして、地方公共団体が個別の個人情報の取扱いの判断につきまして審議会に諮問する必要性は減少していくものと考えております。」

つまり、審議会に諮問する必要性が原則ないというのが同規定の趣旨とされています。

審議会に諮問することの積極的な弊害、特に個人情報の利活用上の弊害は政府参考人により指摘されていません。

そうであれば、審議会に対し、従来どおりの事項について諮問をする条例の規定を設けても、個人情報保護という立法目的はもちろん、個人情報の利活用という立法目的を阻害するものではないと考えられます。

既に述べたところですが、徳島市公安条例事件についての最高裁昭和50年9月10日判決は、普通地方公共団体の制定する条例が国の法令に違反する場合には効力を有しないことは明らかであるが、条例が国の法令に違反するかどうかは、両者の対象事項と規定文言を対比するのみでなく、それぞれの趣旨、目的、内容及び効果を比較し、両者の間に矛盾牴触があるかどうかによつてこれを決しなければならないと述べているところです。

よって、判例に照らし、審議会のあり方を根本的に変更する必要はありません。

ただし、審議会が、個人情報の目的外利用・提供を例外的に許容する役割を担っている場合については、「改正」個人情報保護法を受け、個人情報保護条例の目的外利用・提供に関わる規定を「改正」した場合、その限度で審議会の役割が変更することがあるのは当然のことです。

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