取締役の労働者性

さいとうゆたか弁護士

1 取締役の労働者性を問う意味

取締役は、経営陣であり、通常は労働者ではないとされますが、事情によっては労働者性を有しているとされる場合があります。

この点、そもそも取締役の労働者性を問う意味はどこにあるのでしょうか?

労働者については、合理性・相当性がないと契約を解除されない、最低限の賃金が保障されるなど、法により保護されている側面があります。

ですから、取締役を解任され会社から追い出されたような場合、その取締役が労働者かどうかで全く帰趨が違ってきます。

以下、取締役が労働者でもあるとされる条件について検討します。

 

2 取締役の労働者性についての判例、裁判例

最高裁平成7年2月9日判決は、退職金の支給が争われた事例で、「被上告人は、合資会社である上告人の有限責任社員であるが、定款によって上告人の業務執行の権限が与えられていたことはうかがわれず、被上告人が「専務取締役」の名称の下に上告人の代表者である無限責任社員の職務を代行していたのは、上告人代表者の指揮命令の下に労務を提供していたにとどまるものであり、被上告人が支払を受けていた「給料」はその対償として支払われたものであるということができる。」との判断を示し、業務執行の権限がないこと、代表者の指揮命令の下に労務を提供していたこと等を踏まえ、有限責任社員を労働者として認めました。

近時の裁判例としては、東京地裁令和2年3月11日決定は、従業員から取締役になった者が労働者かどうか争われた事例について、

ⅰ 就業規則に、労働者が取締役になったときに退職する旨の規定がないこと、

ⅱ 当該労働者が取締役になるときに退職届けや退職金の支払いなど、従業員の地位を清算する手続きがなされていないこと、

ⅲ 当該労働者が、取締役就任前後でかわることなく、指揮命令下に同じ業務をおこなっていたこと

などを根拠に、労働者性を認めました。

このように、指揮命令関係、取締役就任時に労働者としての退職に伴う手続きがなされているか、取締役就任前後の業務の変化等が考慮され、取締役の労働者性が判断されることになります。その他、社会保険の加入等も考慮要素とされます。

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