デジタル社会形成整備法に伴う個人情報保護法「改正」で個人情報保護条例はどうなる? その5  オンライン結合

さいとうゆたか弁護士

1 個人情報保護条例によるオンライン結合原則禁止

個人情報保護条例の中にはオンライン結合を原則禁止としているものが多くあります。

 

例えば、新潟市個人情報保護条例は以下のとおり定めています。

 

(オンライン結合による提供の制限)

第9条 実施機関は,通信回線を用いた電子計算機その他の情報機器の結合(保有個人情報を実施機関以外のものが随時入手し得る状態にするものに限る。)により,保有個人情報を実施機関以外のものへ提供してはならない。ただし,次の各号のいずれかに該当するときは,この限りでない。

(1) 法令等に定めがあるとき。

(2) 実施機関が,審議会の意見を聴いたうえで特に必要があると認めたとき。

 

同時に、以下のとおり適正管理についても定めています。

 

(適正管理)

第10条 実施機関は,保有個人情報を適正に管理するため,個人情報保護管理者を置くとともに,次に掲げる事項について必要な措置を講じなければならない。

(1) 保有個人情報は,正確かつ最新のものとすること。

(2) 保有個人情報の漏えい,改ざん,滅失,き損その他の事故を防止すること。

 

2 「改正」個人情報保護法のもとでのオンライン結合原則禁止条項の効力はどうなるか?

「改正」個人情報保護法はオンライン結合について規定を置いていません。

また、「改正」個人情報保護法は、個人情報の利活用を目的の1つとしているところ、オンライン結合原則禁止は個人情報の利活用を妨げる側面を持ちます。

そうだとすると、「改正」個人情報保護法のもとでは、個人情報保護条例にオンライン結合原則禁止条項を置くことは許されないとの解釈もありえます。

この点、「改正」個人情報保護法のもとでのオンライン結合原則禁止条項について、宍戸常寿参考人は以下のとおり述べています。

〇令和3年5月6日 参議院内閣委員会 宍戸常寿参考人

「ルールの共通化に対しては、要配慮個人情報の取得を原則禁止としたりオンライン結合を禁止したりしている条例から見ると保護の切下げになるのではないかという懸念が指摘されております。私は、今回の改正法案は、全国的に見れば保護水準を高めるものであり、また、指摘されている点はおおむね安全管理措置や不適正取得禁止規定などによって対応可能であると考えます」

ここからすると、各個人情報保護条例の安全管理措置規定に関し、オンライン結合による漏えい等の危険性について特に着目して解釈、運用することは許されそうです。

ですから、自治体においては、仮にオンライン結合原則禁止規定を削除することとなるとしても、安全管理措置規定の運用の中で、オンライン結合の危険性について十分配慮することが求められると言えます。

あるいは、「改正」個人情報保護法の66条(安全管理措置)の細目事項としてオンライン結合原則禁止規定を設けることが許されるという解釈がありえないわけではないと考えます。

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