低酸素性虚血性脳症(医療過誤)の損害額

さいとうゆたか弁護士

1 低酸素性虚血性脳症(医療過誤)と損害額

医療過誤により新生児が低酸素性虚血性脳症となった場合、新生児本人及び親は、医療機関等に賠償請求をなし得ます。

賠償額の計算は一般の交通事故や医療過誤と同じ計算方法になります。

以下、新生児の低酸素性虚血性脳症に基づく損害賠償請求について、どの程度の賠償額が認められるか、見ていきます。

2 付添看護費用

症状の重篤性等から容易に付添看護費用が認められます。

京都地裁令和3年3月26日判決は1日8000円の付添看護費用を認めました。

広島高裁岡山支部平成30年7月26日判決は1日6000円の付添看護費用を認めました。

3 自宅看護費用

自宅でも常時介護が必要であり、自宅看護費用も容易に認められます。

京都地裁令和3年3月26日判決は、1日1万5000円の自宅看護費用を認めました。

大阪高裁平成31年4月12日判決は、親族が67歳になるまでの近親者介護費用1日8000円、それ以降被害者が平均余命である77歳までの職業介護人による介護費用1日1万8000円、計4831万6948円を認定しています。

広島高裁岡山支部平成30年7月26日判決は、親族が67歳までになるまでの近親者介護費用1日8000円、それ以降被害者が平均余命85歳に達するまでの職業介護人による介護費用1日1万5000円、合計6467万1320円を認定しています。

4 逸失利益

死亡した場合は死亡した時点での賃金センサスの平均賃金(男児は男、学歴計、全年齢。女児は男女計、学歴計、全年齢)を基礎に計算します。

死亡の場合には生活費控除もします。

死亡事案である京都地裁令和3年3月26日判決は生活費控除率は45%としています。同判決は逸失利益額2766万5948円としています。

大阪高裁平成31年4月12日判決は、賃金センサスの平均賃金(学歴計・全年齢平均)をもとに3568万2711円の逸失利益を認めました。
広島高裁岡山支部平成30年7月26日判決は、症状固定時における賃金センサス(産業計・企業規模計・男女計・学歴計・全年齢)をもとに逸失利益額3555万2860円としています。

 

5 傷害慰謝料

入院期間に応じて定まります。

京都地裁令和3年3月26日判決は、入院期間(952日)に対し440万円を認めました。

大阪高裁平成31年4月12日判決は、1月の入院で50万円を認めました。

広島高裁岡山支部平成30年7月26日判決は、75日の入院で148万円を認めました。

広島高裁岡山支部判決についてはほぼ3月分の慰謝料を認めていますが、それ以外は赤本の定める入院慰謝料通りということになります。

本来は症状の重さに応じた加算があるべきでしょう。

6 後遺障害慰謝料

出生後6年後に死亡した事案で、京都地裁令和3年3月26日判決は、2800万円の慰謝料を認めています。

「歩行が何とかできる程度で,生活面の全ての行為に介助を要する状態であり,中程度の知的障害も有している」場合について、大阪高裁平成31年4月12日判決は、2800万円の慰謝料を認めています。

広島高裁岡山支部平成30年7月26日判決は、近親者含めて2800万円の慰謝料を認めています。

概ね2800万円という判断が定着しているようです。

7 家屋改造費、自動車改造費

以上の他、相当な家屋改造費や自動車改造費が認められる可能性があります。

8 産科事故のお悩みは弁護士齋藤裕(新潟県弁護士会所属)にお問合せください

産科医療補償制度

低酸素性虚血性脳症と医療過誤

オキシトシン投与の医療過誤

も御参照ください。

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