執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会所属、2023年度日弁連副会長)
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1 臍帯異常
臍帯異常は新生児の死亡や重大な障害を来す大きな原因となっています。
どのような臍帯異常があるかは、こちらをご覧ください。
参照:臍帯脱出以外の臍帯因子
臍帯膜絡
臍帯巻絡は、分娩時に臍帯が胎児に巻絡した状態をいいます。
巻絡が3~4回以上だと新生児死亡の可能性が高まるとされます。
超音波診断法により検査されます。
分娩開始前については胎児心拍数モニタリングなどで管理し、必要に応じて急速遂娩術をすることになります。
児頭娩出時については、急速に娩出させ、その後で巻絡を解除すべきとされます。
臍帯下垂
破水前に先進胎児部分の側方または下方に卵膜を隔てて臍帯を透見あるいは触知するものをいいます。
超音波検査で発見されることがあります。
帝王切開をしなければならない場合もあります。
臍帯脱出
破水後に胎児先進部分より先に臍帯が脱出し、子宮口を通過して膣または陰裂間に懸垂してきた状態をいいます。
内診等により診断します。
帝王切開が行われます。
以上の臍帯異常があった場合に適時適切な検査や治療が行われず、新生児が死亡したり、障害が残ったりした場合、医療機関側に賠償請求しうる可能性があります。
2 臍帯異常と医療過誤
大阪地裁平成2年11月26日判決は臍帯脱出のため新生児に脳性まひが生じたことについて医療機関側の責任が問われた事案についての判決です。
同判決は各論点について以下のとおり判断を示しています。
臍帯異常の早期発見義務
同判決は、「医師及び助産婦は内診を十分行っており、胎児の心音にも異常所見は認められず、当時の超音波診断装置では下垂した臍帯等の異常像を描出できないものであり、前記二1に認定した事情、即ち、本件での臍帯脱出の予見可能性が、骨盤位(複殿位)では頭位より発生頻度が高いという程度の一般的なものであったことを考え合わせると、被告病院において臍帯脱出の早期発見に努める義務に違反したとは解し得ない。」として義務違反を認めませんでした。
逆にいうと、内診や心音の検査を十分行っていなかった場合、義務違反が認められる可能性はあるでしょう。
早期の帝王切開の施術義務
同判決は、臍帯脱出発見後、帝王切開が行われ、発見後16~17分で娩出が行われていることから義務違反はないとしました。
他方、これより大幅に遅延が生じた場合、義務違反が認められる可能性はあるでしょう。
3 新潟で産科を巡る医療過誤については弁護士齋藤裕(新潟県弁護士会所属)にご相談ください
も御参照ください。
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