
執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)

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1 横断歩道外の道路を横断中の歩行者と自動車・バイクの交通事故の過失割合
横断歩道外で、横断歩道の近くでもない交差点以外の道路を歩行者が横断し、自動車やバイクと衝突した際の過失割合は、別冊判例タイムズ38「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準 全訂5版」37図によると、基本は歩行者20:自動車80となります。
夜間で5%、幹線道路で10%、横断禁止規制ありで5~10%、直前直後横断・佇立・後退で10%、歩行者の過失が加算されます。
住宅街・商店街等で5%、児童・高齢者等で5%、幼児・身体障害者等で10%、集団横断で10%、自動車の著しい過失で10%、自動車の重過失で20%、歩車道の区別なしで5%歩行者の過失が低くなります。
2 横断歩道外の道路を横断中の歩行者と自動車・バイクの交通事故の過失割合についての裁判例の状況
千葉地裁館山支部令和1年12月24日判決は、
ⅰ 自動車がライトをロービームにしていたこと
ⅱ 自動車は最高速度は時速40kmと規制されていたのに時速60㎞で走行していたこと
ⅲ 自動車は進路前方約16.8mの地点で歩行者をようやく認めたものの,急制動を講じる間もなく,自動車を歩行者に衝突させたこと
ⅳ 午前4時48分頃に発生した夜間事故であること
などを踏まえ、歩行者の過失15%,自動車の過失85%としました。
夜間で歩行者の過失が5%加算されるので、判決は、ⅰ~ⅲの事情を著しい過失ととらえ、自動車に不利に10%修正したと言えます。
東京地裁平成24年7月18日判決は、
ⅰ 被害者が5歳児であったこと
ⅱ 被害者は自動車が間近に迫った状態で,駐車車両の間から本件道路の斜め横断を開始したこと
ⅲ 母親も幼児を連れて道路を横断するのであるから,幼児と手をつないで一緒に本件道路を渡ったり,本件道路の車両の有無等に留意し,Aに注意を促したり,道路を渡るタイミングについて指示を出すなどして,その安全を確保すべき注意義務があったのに,これを怠ったこと
ⅳ 交通も頻繁であったこと
を踏まえ、歩行者側の過失を25%としました。
ⅰで歩行者の過失は10%小さくなり、直前横断で10%過失が増えるので、判決はその他の要素(ⅱの駐車車両の間からの斜め横断、ⅲの母親の監督不十分、ⅳの交通量)で歩行者側に5%の過失を加算していることになります。
著しい過失などは37図では明示されていませんが、著しい過失が歩行者側にあるとして5%歩行者側に不利に修正されたと言えます。
3 横断歩道外の道路を横断中の歩行者とバスとの交通事故の過失割合(車道側を歩いてバスの前に出た歩行者がひかれた場合等)
なお、上記したところはバスと、横断歩道外の道路を横断中の歩行者との事故の場合にも同様のことが言えます。
ただし、路線バスについては、特殊な考慮が必要です。
路線バスが、乗客をおろし、発進した直後、車道を横断してきた小学生と衝突した交通事故についての広島地裁呉支部平成23年3月16日判決は、過失相殺を認めませんでした。
同判決は、
ⅰ 被害者が小学校に入学して2日目の6歳の児童であったこと,
ⅱ 被害者が道路を横断しようとしたときには,バスは停止した状態であったこと,
ⅲ 場所的な関係で、降車客がある方向に進行するには,バスの直前を横断するしかない状態にあったこと
ⅳ バス運転手は児童らが降車したことを認識していたこと
を考慮し、過失相殺を否定したものです。
バスと乗客との関係については、一般の車両よりは運転手にとって道路横断が想定しやすいとは言え、バス運転手について重い過失が認められやすいとは言えます。
車道側を歩いてバスの前に出た歩行者がひかれた場合についても、そのような歩行者がよくみられる、歩行者がそのような横断をせざるを得ない状況にある場合は同様です。
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